旅する美術史:オーヴェル・シュル・オワーズを歩く ゴッホ最期の村とラヴー亭、最後の部屋へ

ゴッホの部屋にあった椅子。

ラヴー亭と「ゴッホの家」

オーヴェルを訪れたなら、やはり欠かせないのが、ゴッホが最晩年を過ごした下宿、
「ゴッホの家」Maison de Van Gogh です。
村役場のすぐ近くにあり、現在は見学できるようになっています。

ここでゴッホは、村の中心にほど近い小さな部屋に暮らしていました。
画家として名声を得ることのないまま、しかし最後まで描き続けた日々。
その生活の場が、今もこうして残っていることに、まず強く心を動かされます。

1階には、当時の面影を残すラヴー亭(Auberge Ravoux)があり、現在もレストランとして営業しています。
ゴッホがここで食事をし、ワインを飲み、日々の時間を過ごしていたと思うと、
この場所は単なる「記念館」ではなく、今も生活の延長の中にある空間として感じられます。

ゴッホの家とラヴー亭。Photo by HASEGAWA, Koichi

ラヴー亭の内部には、19世紀の空気がまだ少し残っているような感じがあります。
もちろん当時そのままではないにせよ、空間の質感や静けさの中に、
ゴッホが過ごした時間を想像させるものがある。

店の中庭にワインの瓶が干してあった。Photo by HASEGAWA, Koichi
ラヴー亭の内部。Photo by HASEGAWA, Koichi

この場所の重さは、やはりここがゴッホの人生の最後の舞台であることにあります。
通説では、1890年7月27日、ゴッホは拳銃で自らを撃ち、傷を負ったまま自力で下宿へ戻ったとされています。
そして二階の小さな部屋へ上がり、翌日、駆けつけた弟テオに看取られるようにして亡くなりました。

この出来事を知ったうえで階段を上がると、その動作そのものが重く感じられます。
彼はここを最後に上がり、生きて再び外へ出ることはありませんでした。

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