パリに着いた、と感じる場所はいくつもある。
空港から街へ向かう車窓かもしれない。セーヌ川を初めて見た瞬間かもしれない。あるいは、メトロの階段を上がったときに、ふいに目の前へ広がる石造りの街並みかもしれない。
けれど僕にとって、パリの記憶が何度も立ち上がってくる場所のひとつが、パリ北駅である。
ロンドンから、ブリュッセルから、アムステルダムから、そしてヨーロッパのさまざまな街から、列車に乗った旅人たちがこの駅に降り立つ。大きなスーツケースを引く人。誰かを探すようにホームを見渡す人。慣れた足取りで改札へ向かう人。
北駅は、ただの駅ではない。
ここは、旅人が交差する場所である。
パリの北の玄関口、北駅
パリ北駅には、いつもたくさんの列車が入ってくる。
ロンドンから英仏海峡トンネルを抜けてやってくるユーロスター。ブリュッセルからの高速列車。アムステルダムやドイツ方面から到着する国際列車。行き先も、言葉も、旅の理由も違う人々が、この大きな駅のなかで一瞬だけすれ違っていく。
駅構内には、どこか旅情がある。
大きな荷物をいくつも抱えた家族連れが、小さな子どもの手を引きながら歩いている。少し離れたところでは、ロンドンから到着したのだろうか、スーツ姿のビジネスマンが足早に僕の前を横切っていく。その後ろでは、パリの家族に会いに来たらしい人たちが、出迎えに来た老夫婦を見つけて、笑顔で手を振っている。
人はそれぞれの理由を抱えて、この駅に降り立つ。

もうずいぶん前になるが、僕の初めてのパリも、この北駅から始まった。
ロンドンからユーロスターに乗ってパリへ向かい、北駅に到着したことが懐かしい。駅の近くのホテルに泊まり、友人と待ち合わせをし、近くの店で食事をしたこともある。先日も、妻とロンドンからパリへ移動したときに、やはりこの駅を使った。
北駅に降りると、不思議なほどいろいろな記憶が戻ってくる。
誰かと会ったこと。誰かと別れたこと。初めてパリの街へ歩き出した日の、少し緊張した気持ち。何度か訪れるうちに、いつのまにかこの駅が、自分の旅の記憶のなかに深く入り込んでいたこと。
北駅は、旅人がたくさん交差する場所だ。








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