旅のはじまりに
今回は、アイルランドの首都ダブリンから、海を越えてイギリス領・北アイルランドへと足を延ばし、神秘的な絶景「ジャイアンツ・コーズウェイ」を訪ねます。
六角形の玄武岩が広がる不思議な風景――その圧倒的な自然美は、1986年にユネスコ世界遺産にも登録され、北アイルランドを代表する観光名所となっています。
本記事では、ダブリンから北へ向かい、ジャイアンツ・コーズウェイとその周辺のコーズウェイ海岸を巡る旅のルートをご紹介します。
ジャイアンツコーズウェイ

目次
1. ジャイアンツ・コーズウェイへの旅路
北アイルランドの北端に広がる、神秘的な奇岩の風景──ジャイアンツ・コーズウェイ。
今回は、アイルランドの首都ダブリンからこの絶景を目指しました。
まずダブリンから鉄道に揺られて、北アイルランドの中心都市・ベルファストへ。そこからはバスに乗り換えて、美しい海岸線を走り抜けながら、コーズウェイ海岸へと向かいます。都市から自然へ、国境を越えるこのルートは、まさに旅心をくすぐる冒険の始まりでした。

1-1: オススメ旅程:アイルランドの首都ダブリンから北上する旅行プラン

おすすめの旅程は、まずアイルランドの首都ダブリンをゆっくり観光してから、北へ向かうプランです。アイルランドに興味を持つ人なら、きっとケルト文化の香りを感じたいと思うはず。
そんな文化体験にぴったりなのが、ダブリンの名所「トリニティ・カレッジ」。ここには、”世界で最も美しい本”とも称されるアイルランドの国宝『ケルズの書』が所蔵されています。
『ケルズの書』は、6世紀から9世紀にかけて制作されたラテン語の福音書で、ケルト美術の粋を集めた装飾写本。その精緻で幻想的な装飾は、ページをめくるたびに息を呑む美しさです。
僕も実際にこの『ケルズの書』をダブリンで見てきました。全4巻のうち、2巻が常設展示されていて、展示されるページが時期によって変わるのもユニーク。訪れるたびに新たな発見があります。アイルランドの文化と美術の粋に触れたい方は、ぜひトリニティ・カレッジを訪れてみてください。

また、ダブリンといえば、ロックファンにお馴染みのU2。彼らの足跡を訪ねるのもいいですね。

ダブリン滞在の締めくくりは、やっぱりギネス!
ダブリンを訪れたら、やはり味わいたいのがアイルランドを代表する黒ビール、ギネス。独特のクリーミーな泡と深いコクは、本場で飲むと格別です。街のどこにでもあるアイリッシュ・パブで、ぜひ一杯。
もちろん、もうひとつの名物といえば、ジェムソン・ウイスキー。ギネスとはまた違ったアイリッシュの味わいを楽しめます。
さらに、ギネスを使った煮込み料理も絶品。ビーフをギネスでじっくり煮込んだアイリッシュ・シチューは、身体の芯から温まるアイルランドの家庭の味。ベルファストへ向かう前に、駅近くのパブやレストランでぜひ味わってみてください。旅のエネルギーをしっかりチャージできますよ。

※ 東京でオススメのアイリッシュ・パブあります。帰国後に雰囲気に浸かりに行きましょう。
アイリッシュ・タイムス:新橋にあるお店で、お店の外観もですが、中も雰囲気あります。オススメのお店。アイリッシュタイムス

ダブリンから電車に乗って、北上しましょう。目指すはベルファストです。ここからはバスで向かいますが、ツアーも出ているので不安な方はツアーもいいですよ。
バスでさらに北上します。するとアイルランドらしい美しくも荒涼とした風景の先に、今回の目的地である巨人伝説の地が現れてきます。
1-2: アイルランドへの行き方
ここで、アイルランドへの行き方も少し紹介します。
1-3: ロンドン経由
アイルランドへは日本から直行便がありません。よってロンドンまで行ってからトランジットになります。ブリティッシュ・エアウェイズだと、ヒースロー空港からのトランジットも比較的楽。ダブリンへのフライトになります。
またはロンドンへ行ってから、ライアンエアーなどの格安航空に乗り換えるのもありです。ヒースローとは違う空港から飛んでいるのも多いため、日本から行く場合は注意が必要です。

Easy Jet: ロンドンのガトウィック空港やルートン空港から出ています。
Ryanair: ルートン空港やガトウィックから出ています。
英国在住者やヨーロッパ在住者は、ライアンエアーやイージージェットでダブリンまで行くのが、安くてお得。
1-4: パリ経由
日本からエールフランスでロワシーにあるドゴール空港へ。そこからのトランジットになります。ドゴール空港からダブリンまでは2時間弱。
その他の都市だと、直行便が飛んでいる都市、フランクフルトや中東のアブダビなどでトランジットがあります。個人的には、欧州各都市へ直行で飛んでから、トランジットが楽ですね。
成田からだと、ヘルシンキやスキポール空港を経由するのも多いです。スカイチームやスターアライアンスなどで色々な組み合わせがあると思いますが、旅程と値段で決めるといいでしょう。
2. ジャイアンツ・コーズウェイの奇景の正体
神秘の海岸──コーズウェイ海岸。
いよいよ、コーズウェイ海岸にやってきました。
目の前に広がるのは、まるで別世界のような風景。
海岸の一角には、およそ4万本もの六角形の玄武岩の石柱が、地面から突き出すようにずらりと並んでいます。その姿は、まるで巨人がどこか遠くから運んできて、海辺に刺し立てたかのよう。
自然が生み出したとは思えない、不思議で力強い景観。
足元に広がる石の道を歩いていると、自分が物語の中に迷い込んだような気持ちになります。

この不思議な岩の正体は、四角から八角までさまざまな形をした玄武岩。中でも多いのは、規則正しく連なる六角柱です。
地面から石が湧き出してきたかのような、ダイナミックな景観。自然が描いた幾何学の芸術と言ってもいいでしょう。石好きにはたまらないスポットで、つい一つ一つの形や角度をじっくり観察してしまいます。
それにしても、なぜこんな形になるのか──自然の力の不思議さに、ただただ圧倒されるばかりです。


3. ジャイアンツ・コーズウェイにある巨人神話
神話の道──フィン・マックールの伝説。
この奇岩群には、アイルランドの神話が息づいています。
伝説によると、アイルランドの英雄フィン・マックールが、海の向こうのスコットランドに住む巨人との戦いのために、玄武岩の道を海に向かって築いたといいます。まるで石を突き刺すようにして海へ道を延ばしたという話には、この光景を前にすると妙に納得させられます。
ここに立つと、「地の果てまで来た」という感覚とともに、広がる不思議な景観に心が引き込まれていきます。目の前の風景が、いつしか神話の世界へと続く扉のように見えてくるのです。
そして、この物語には続きがあります。スコットランドの対岸にある「フィンガルの洞窟」──そこにも、この伝説に呼応するような玄武岩の柱状節理が広がっています。僕自身はまだ訪れたことはありませんが、アイルランドからスコットランドへと続く“神話の旅路”をたどるのも、きっと素敵な旅になることでしょう。


ロックと奇岩──Led Zeppelin『Houses of the Holy』と“地の果て”
ところで、このジャイアンツ・コーズウェイは、ロック史に残る名盤──Led Zeppelinの5枚目のアルバム『Houses of the Holy』(1973年)のジャケットに登場することで知られています。
ジャケットには、この玄武岩の奇景に小さな子どもたちがよじ登っていく幻想的な姿が描かれており、そのイメージはイギリスのアート集団「ヒプノシス(Hipgnosis)」によるもの。SF作家アーサー・C・クラークの小説『幼年期の終わり』にインスパイアされて制作されたと言われています。
重厚なギターリフと浮遊感のあるメロディ、そして一筋縄ではいかない世界観──『Houses of the Holy』のサウンドは、まさにこの“地の果て”のようなジャイアンツ・コーズウェイの風景と呼応しているかのよう。
神話が息づく場所に、70年代ロックの幻想が重なり合う。音楽ファンにとっても、ここはまさに“聖地”と呼ぶにふさわしい場所です。


巨人伝説に朽ちた古城。北アイルランドは歴史と神話のロマンがいっぱい。こうした文化が、美しい風景にマッチして、天候がいい日も、曇天の日も、それぞれ良さを引き出しています。
コーズウェイ海岸の壮大な景色や、アイルランドの温かい人々に触れ、この旅がどれほど心に響いたか、少しでも伝わっていたら嬉しいです。写真では伝えきれない感動が、そこには確かにありました。この記事が、あなたの次の旅のヒントになれば幸いです。

Photo and Writing by Hasegawa, Koichi and Shino
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