旅する美術史:バルセロナの光と若きピカソ グエル公園から見た地中海
はじめに
バルセロナのグエル公園から、地中海を見下ろしたことがある。
あの日の空はまぶしく、海はどこまでも青く、強い光を返していた。
丘の上に立つと、街も海もひとつの大きな風景として開け、カタルーニャの光がそのまま身体に入ってくるようだった。
いま、来年に行う美術史講座の準備を少しずつ進めている。
テーマはパブロ・ピカソ。
とりわけ若き日の彼に焦点を当てながら、その原点をたどるように資料を読んでいると、ふと以前訪れたバルセロナの記憶がよみがえってきた。
グエル公園を歩いたあの午後、僕はガウディとその時代の建築が生み出した自由な空間の中にいた。
曲線を描くベンチ、自然の起伏に寄り添う構造、地中海へ向かって開かれた視界。
そこには、ただ美しいだけではない、形式に縛られない表現の喜びのようなものがあった。
バルセロナという街には、建築と自然、都市と芸術がどこか近い距離で呼応しているところがある。
夏の風の中でその空気を感じていると、この街が若い芸術家たちにどれほど大きな刺激を与えたかが、少しわかる気がした。
若きピカソもまた、この街の光と空気の中で、自分の表現を少しずつ押し広げていったのだろう。
バルセロナは、彼にとって単なる青春の舞台ではなく、新しい眼を育てた場所のひとつだったはずだ。
グエル公園から見た青い海を思い出しながら、僕はあらためて、ピカソをバルセロナから考えてみたくなっている。
作品だけを見るのではなく、彼が呼吸していた街の光から、その出発点を見つめ直してみたいと思う。
Photo and Writing by HASEGAWA, Koichi








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