スイス・アルプスへの旅。
登山史として多くの歴史があるスイスの名峰アイガーを紹介する。
グリンデルヴァルト
アイガー北壁をグリンデルヴァルトから眺める
「あれがアイガーの北壁か」
アルプスの山間を抜けて登山鉄道で開けたところに出ると、眼前に名峰アイガーと有名な北壁が現れる。
まさに絶壁だ。そして、そそり立つ岩壁が神々しい。
1800メートルの岸壁は、ノースフェイスとか死の壁とか呼ばれる。
登山鉄道はやがてグリンデルヴァルト駅に到着。ここは名峰アイガーの麓に広がる美しい村だ。ここからゆっくりとアイガーを眺める。この北壁は、村からよく見えるため、村人たちは北壁を登る登頂者を村から双眼鏡で眺めていたそうだ。
僕も場所を変えながら様々な角度でこの山を眺めてみる。富士山を超える標高を持つアイガーは3967mもある。
アルプス三大北壁
アルプスには3つある難関登頂ルートが有名だ。それはアルプス三大北壁として知られる。
1つ目はフランスとイタリアの国境にまたがるモンブラン山系にあるグランド・ ジョラス。4000メートルをゆうに越える山々が連なる難関。2つ目は有名なマッターホルン北壁。そしてアイガー北壁だ。
アイガーの登頂史
アイガーの初登頂は1858年にアイルランド人のチャールズ・バリントンによって成し遂げられるが、北壁からの登頂には時間を要した。それは1934年から試みられるが、墜落や凍死などで失敗。後に映画や小説になった有名な1936年の悲劇的な失敗もあった。
この事故以降、一時登頂を試みること自体が禁止になった。
その後初登頂が成し遂げられたのは1938年。ドイツとオーストリアのチームによって達成される。
快挙であった。
その後も数々の登頂史を刻むが、その中には日本人の登頂達成者も何人かいる。
新田次郎が小説に書いた「アイガー北壁」では、日本人登山家の模様を描いているため、アイガーに行くときに読んでみるのもいい。また、映画「North Face」は、上記の1936年の有名な遭難を描いており、アイガーの美しさとともにその厳しさをも描く。
アイガーを眺める:山岳写真の魅力
僕がインターラーケンからグリンデルヴァルトへ入ったのは、ある夏の日の昼頃だった。村を散策し、ハイキングコースであるフィルストへ行って午後いっぱい使ってハイキングをしながら、時折アイガーを眺める。見るたびにその雄大な姿にしばし心を奪われた。
そして夕刻、刻々と色が変わるアイガーを見に村はずれまで行ってしばらく眺めてみた。刻々と変わる色合いに心を奪われる。この色合いの変化を写真を撮る。
夕日が落ちていく光景の中にアイガーが佇む姿を見ると、何か広大な宇宙というのを感じさせられる。厳と揺るがないその姿は、何か神々しくもある。自然はかくも偉大で大きい。
この日、アイガー北壁は美しく光り輝いていた。
登山家植村直己を想う
登山家であり、冒険家の植村直己が書いた『エベレストを越えて』という一冊がある。
これはエベレスト登山の記録としても、読み物としても、旅の紀行文としても名著で、登山愛好家はもとより旅を愛する全ての人にオススメの一冊だ。
僕はヒマラヤは見たことがないが、スイス・アルプスの雄大さは何度も感じている。『エベレストを越えて』を読んでいると、僕が見た中で一番険しい山々であるアルプスを思い出される。そして、それはいつも険しいアイガーの北壁を思い出すのだ。
登山映画の傑作『アイガー北壁』
先ごろ登山映画の傑作として名高い『アイガー北壁』(2008)を鑑賞した。
高い山やそこを目指す登山家達の挑戦には以前から胸を躍らせたが、この映画からはその厳しい環境下で挑戦するクライマー達の臨場感がすごく伝わってくる。
様々な実話をもとに初登頂を目指すドイツ人パーティを描く。現地に行ったことがある方も、今後行ってみたい方、あるいは登山映画が好きな方にもオススメの映画だ。
山を舞台にした映画オススメ
まずは『エベレスト』(2015)。これは1996年に実際に起こった遭難事故を描いた映画で、エベレストの迫力が伝わってくる。
僕にとってこの手の映画でまず思いつくのが、『クリフハンガー』(1993)。登山映画というよりは、山岳地帯を舞台にしたアクション映画。シルヴェスター・スタローン主演の大ヒット映画。山岳地の厳しさをよく取り入れたアクションで、面白い一本。
有名な『八甲田山』(1977)も外せない。新田二郎の小説をもとに高倉健主演。僕は東北出身で、八甲田へは何度か行った事があるが、あの自然環境をよく表現している。日本映画の傑作のひとつだ。
Photo and Writing by HASEGAWA, Koichi