はじめに
バーミンガム――イギリス第2の都市であり、中部地方の心臓とも言える場所。かつては「世界の工場」と称されたこの街も、今では多文化が融合する活気あふれる都市に変貌した。歴史と革新が共存するバーミンガムの街並みは、その建築と豊かな運河が象徴的。
今回は、この街の隠された魅力を、建築とバーミンガム運河に焦点を当ててご紹介していく。
バーミンガム
目次
1. バーミンガムはこんな街
バーミンガムは、イングランド中部の中心都市として、産業革命以来の重要な街で、ロンドン、マンチェスターやグラスゴーと並び大都市に数えられる。近年では、経済と文化の中心地としても注目を集め、多様性に富んだ街並みが広がっている。
日本からのアクセスも便利で、バーミンガム空港を利用すれば、イングランド中部のさまざまな地域へスムーズに移動できるため、多くの旅行者がこの空港を拠点にしている。
バーミンガムの多彩な魅力
バーミンガムは、多様な移民が集まり、国際色豊かな雰囲気が街全体に漂っている。文化的な面でも非常に充実しており、一流の美術館や高水準のオーケストラが多くのアート愛好者を魅了している。
さらに、ロックファンにとっては特別な存在だろう。レッド・ツェッペリン、ブラック・サバス、ジューダス・プリーストといった伝説的なバンドがこの街と深く結びついており、音楽史にその名を刻んでいる。ロック好きなら、この街の名前を聞いたことがある人も多いはずだ。
また、街を流れる運河は、その昔、工業の血脈として活躍したが、今では散歩やクルーズで楽しむことができるリラックススポットに。そして、サッカーファンには、プレミアリーグの試合観戦が魅力の一つ。バーミンガムは、歴史、文化、スポーツが調和した魅力的な都市だ。
2. バーミンガムの新旧の建築を楽しむ
渡英した当時、私はバーミンガム近郊のカレッジに通っていたため、この街には多くの思い出が詰まっている。特に印象に残っているのが、街の中心に位置するセイント・マーチン広場とブル・リング・ショッピングセンターだ。このエリアは、歴史ある建物と近代的な商業施設が見事に調和し、バーミンガムの象徴的な景観を作り出している。活気に満ちた街並みの中を歩くたびに、当時の記憶が鮮明に蘇る。
写真の右手に近未来的な建物が、ブル・リング・ショッピングセンターで、1万5千枚のアルミニウムの円盤が取り付けられている。中にはハイブランドを取り扱うセルフリッジ・デパートが入っている。
これに対し左手にあるのは、セイント・マーチン教会。歴史的には13世紀に遡る古い教会だが、現在のものは、19世紀のヴィクトリア期に取り壊して再建したもの。
建築家 J.A チャットウィン(Julius Alfred Chatwin) (1830-1907)は、バーミンガムやミッドランド地域で活躍した建築家。
セイント・マーチン教会を訪れた際にぜひ注目したいのは、バーミンガム出身の巨匠エドワード・バーン=ジョーンズ(1833-1898)がデザインした美しいステンドグラスだ。彼の繊細なデザインは、光を通して幻想的な雰囲気を作り出し、一見の価値がある。もしバーミンガムを訪れる機会があれば、ぜひこの教会でその芸術に触れてみてほしい。
さらに、バーン=ジョーンズの絵画作品はバーミンガム美術館にも多数所蔵されているため、教会のステンドグラスと合わせて彼の作品世界を存分に楽しむことができる。
バーミンガム美術館は、ラファエル前派のコレクションで名高く、特に当時のイギリス絵画に興味がある方には必見の美術館だ。ここでは、エドワード・バーン=ジョーンズの作品をはじめ、ラファエル前派の美術を通じて、19世紀の芸術運動に触れることができる。セイント・マーチン教会のステンドグラスと併せて、ぜひその芸術の世界を堪能してほしい。
イギリスの建築には、近未来的な斬新なデザインが多い。これはロンドンやマンチェスターなどの大都市に限らず、地方都市にも見られる特徴だ。マンションや大学などで斬新な建築デザインをよく見かける。
バーミンガムの中世と近未来的デザインの建築を見ていると、新旧の共存が、常に新しい文化を生み出す源泉なのかもしれないと気付かされる。
3. バーミンガムで楽しむ運河沿い散歩。イギリス中に張り巡らされている運河とナロウ・ボート
次に紹介するのは、バーミンガムの運河沿いを散策するエリア。イギリスの運河網は世界的に有名で、地方の風景だけでなく、ロンドンなど都市部でもその魅力を楽しむことができる。バーミンガムもその例外ではなく、街の中心を縫うように運河が広がり、その美しい景観は街のもう一つの顔を見せてくれる。水辺の静かな雰囲気を感じながら、バーミンガムの運河を散策してみよう。
4. イギリスの運河とナロウ・ボート
イギリスには運河網が約3,200 Km以上 にも渡り張り巡らされている。
もともとは、ローマ時代に灌漑目的で作られたが、産業革命時代の18世紀から19世紀には物流のための大原動力となり発展した。19世紀末の鉄道の登場以降は、その主役を陸上運送に取って代われたが、20世紀後半には、レジャー目的で再度運河が人気を集めるようになった。
ナロウ・ボートで運河を巡る
この運河航行用の船が、上の写真にも写っている細長い船である、ナロウ・ボート(Narrow Boat) 。イギリスにいると、このナロウボートをよく見かける。
ボートの幅は、イギリスの細長い運河を航行するために幅が7フィート(2.14m)以下に設計されている。
船内は、レジャー用途や週末に宿泊できるようにキッチンをはじめ生活に必要なものが揃っているものも多い。これに加え、観光用のナロウボートもあり、場所によっては船に乗って運河を巡ることもできる。
5. バーミンガムで運河散策: ガス・ストリート・ベイシン地区
バーミンガムのガス・ストリート・ベイシン地区は、街の中心部に位置する船のたまり場であり、その周辺は独特の雰囲気を醸し出している。運河沿いの風景は美しく、散策には最適なエリアだ。歴史ある建物やカフェ、ショップが並び、リラックスしたひとときを楽しむことができる。ぜひ、散策に訪れてみてほしい。
ここは、バーミンガム運河水路網のジャンクションで、ここからの水路網は、ウエスト・ミッドランド地域のウスター、ダドリー、ウォルバーハンプトン等を結ぶ。
もちろんナロウボートも沢山航行している。
運河沿いを散策するエリアには洒落たレストランも沢山あり、メイルボックスというショッピングエリアにもアクセスできる。ここはハイブランドが入ったなかなか洗練された所だ。
さらに、運河の美しい景観や歴史的なレンガの建物を眺めながら食事やお酒を楽しむひとときは、バーミンガムの夜の魅力を存分に感じることができるためオススメだ。
Photo and Writing by Hasegawa, Koichi
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