今回の旅先は、フランス南部の港町、マルセイユである。
マルセイユは、フランス最古の都市とも言われる、地中海に面した大きな港町だ。
パリのような洗練とは少し違う。
ニースのような明るいリゾート感とも違う。
マルセイユには、もっとざらりとした港町の空気がある。潮風、坂道、漁船、カフェ、石造りの建物、移民文化、そして地中海の光。
美しく整えられた観光地というより、人が暮らし、船が行き交い、歴史が積み重なってきた生きた街である。
今回は、そんなマルセイユを、古港の風景と映画の記憶を手がかりに歩いてみたい。
パリからマルセイユへ|南へ向かう鉄道の旅
パリからマルセイユへは、TGVで向かうことができる。
パリ・リヨン駅を出発し、南へ、南へと列車は走っていく。
フランスを鉄道で移動する楽しさは、風景の変化にある。
パリを出たときの空気と、南仏へ近づいていくときの光は違う。窓の外には、田園風景や丘陵が流れ、やがて地中海の気配が近づいてくる。
夏に向かうマルセイユはもちろんいい。
けれど、冬のマルセイユもまた印象深い。
パリの灰色の空と冷たい風を離れ、列車で南へ向かう。マルセイユに降り立つと、空気が少し柔らかく、光が明るく感じられる。
同じフランスでありながら、気候も、街の音も、人の気配も変わる。
その変化を身体で感じられることが、鉄道旅の魅力だと思う。

マルセイユ・サン・シャルル駅に着くと、旅が一気に南仏へ切り替わる。
駅前から街へ向かうと、坂の先にマルセイユの街並みが広がる。ここから港へ下っていく時間も、マルセイユらしい旅の導入である。

古代より栄えてきた港町マルセイユ
マルセイユの歴史は古い。
地中海に面したこの街の起源は、紀元前6世紀にまでさかのぼる。ギリシャ人たちによって築かれた古代都市マッサリアを起源とし、長いあいだ地中海交易の重要な拠点として栄えてきた。
マルセイユという街を歩くと、その歴史の厚みがどこかに残っている。
古代ギリシャ、ローマ、地中海交易、北アフリカとのつながり、近代の港湾都市としての発展。
さまざまな時代と文化が、この街には流れ込んでいる。
フランスでありながら、フランスだけではない。
ヨーロッパでありながら、地中海世界であり、北アフリカにも開かれている。
その多層的な感じが、マルセイユの魅力である。

マルセイユ古港を歩く
マルセイユを訪れたら、まず歩きたいのが古港である。
古港は、マルセイユの歴史の始まりの場所であり、今もこの街の中心にある。
港には船が並び、地元の人が歩き、観光客が写真を撮り、カフェのテラスでは人々が話している。
けれど、マルセイユの古港には、観光地としてきれいに整えられすぎた感じがあまりない。
どこか生活感がある。
漁師の気配、船の匂い、日常のざわめき。そうしたものが残っている。
港という場所は、ただ美しいだけではない。
人が働き、人が行き交い、ものが運ばれ、街の外と内がつながる場所である。
マルセイユ古港を歩くと、この街が観光のためだけにあるのではなく、今も生活の続いている港町なのだと感じられる。

古港に立つと、地中海からの潮風が吹いてくる。
朝は漁港らしい活気があり、昼には光が強くなり、夕方には港全体が少し柔らかい色になる。
港町の魅力は、時間によって表情が変わるところにある。
船が並ぶ風景を眺めながら歩くだけでも、マルセイユに来たという実感が湧いてくる。




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