バーミンガムは、イギリス中部を代表する大都市である。
ロンドンやマンチェスターほど観光地として語られることは多くないかもしれない。けれど、実際に歩いてみると、この街にはとてもイギリスらしい魅力がある。
産業革命の記憶、近代的な建築、多文化的な街の空気、そして街の中を流れる運河。
かつて「世界の工場」とも呼ばれたバーミンガムは、工業都市として発展した街だった。しかし現在のバーミンガムには、重厚な産業都市の面影だけでなく、新しい建築や文化施設、洗練された商業空間も広がっている。
さらにこの街は、美術史の視点から見ても面白い。
バーミンガム出身の画家エドワード・バーン=ジョーンズ、ラファエル前派のコレクションを持つバーミンガム美術館、そして産業都市を支えた運河の風景。
今回は、建築と運河、そして美術の記憶を手がかりに、バーミンガムの街を歩いてみたい。
バーミンガムはこんな街
バーミンガムは、イングランド中部、ウェスト・ミッドランズ地方の中心都市である。
産業革命以降、この街は工業都市として大きく発展した。金属加工、製造業、運河による物流。そうした産業の蓄積が、バーミンガムという都市の性格を形づくってきた。
一方で、現在のバーミンガムは、単なる工業都市ではない。
街には多様な文化が入り混じり、ショッピングエリア、美術館、コンサートホール、レストラン、大学施設などが集まっている。大都市でありながら、ロンドンとは違う中部イングランドらしい落ち着きもある。
僕にとってバーミンガムは、個人的にも思い出のある街だ。
渡英した当時、バーミンガム近郊のカレッジに通っていたため、この街には何度も足を運んだ。買い物をしたり、友人と会ったり、美術館へ行ったり、運河沿いを歩いたりした記憶が残っている。
久しぶりに思い出してみると、バーミンガムは派手な観光都市というよりも、歩きながら少しずつ魅力が見えてくる街だったように思う。

新旧の建築が隣り合う街
バーミンガムを歩いていて印象的なのは、新しい建築と古い建築が、かなり大胆に隣り合っていることだ。
その象徴的な場所のひとつが、セイント・マーチン教会とブル・リング・ショッピングセンターのある一帯である。
歴史ある教会のすぐ近くに、近未来的な外観を持つ商業施設が建っている。古い石造りの建築と、金属的で曲線的な現代建築。その対比はかなり強い。
最初に見たときは、少し不思議な組み合わせにも思えた。
しかし何度か歩いているうちに、その違和感こそがバーミンガムらしさなのだと感じるようになった。
この街は、過去を完全に保存している街ではない。かといって、古いものをすべて消して新しいものに置き換えているわけでもない。産業都市として変化し続けてきた場所だからこそ、建築にも新旧の衝突と共存がはっきり表れている。

セイント・マーチン教会とバーン=ジョーンズ
ブル・リングのそばに建つセイント・マーチン教会は、バーミンガム中心部の歴史を感じさせる建物である。
現在の教会堂は19世紀のヴィクトリア期に再建されたものだが、その歴史は中世にまで遡る。現代的な商業施設に囲まれながらも、教会の尖塔と石造りの姿は、街の記憶を静かに保っている。
この教会で注目したいのが、バーミンガム出身の画家エドワード・バーン=ジョーンズに関わるステンドグラスである。
バーン=ジョーンズは、19世紀イギリス美術を代表する画家のひとりであり、ラファエル前派と深く結びついた存在である。彼の作品には、中世的な物語性、繊細な線、夢のような人物表現が見られる。
教会のステンドグラスを通して見るバーン=ジョーンズの世界は、美術館で見る絵画とはまた違った魅力がある。
光を受けて色彩が輝き、人物や装飾が礼拝空間の中に溶け込む。ステンドグラスは、建築と美術が一体になる表現である。
バーミンガムの街歩きでは、こうした小さな美術史の入口に出会えるのが楽しい。

バーミンガム美術館とラファエル前派
セイント・マーチン教会を訪ねたら、あわせて見たいのがバーミンガム美術館である。
バーミンガム美術館は、街の中心部に位置する美術館で、ラファエル前派のコレクションで知られている。
ラファエル前派は、19世紀イギリス美術を考えるうえで欠かせない芸術運動である。中世的な主題、緻密な描写、鮮やかな色彩、文学や神話との結びつき。そうした特徴を持つ作品群は、ヴィクトリア朝の美術と文化を豊かに伝えている。
バーン=ジョーンズの作品も、この美術館で楽しむことができる。
教会でステンドグラスを見て、美術館で絵画を見る。そうすると、バーン=ジョーンズという画家が、宗教空間、装飾芸術、絵画のあいだを行き来しながら作品世界を広げていたことが感じられる。
バーミンガムは産業都市として語られがちだが、美術史の面でも決して見逃せない街である。









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