はじめに
今回紹介するのは、夜の大阪と宮本輝の名作である『泥の河』。宮本輝の小説は、関西を舞台としている作品が多い印象がある。もちろん、多作な小説家なので、ヨーロッパが舞台な『ドナウの旅人』や『オレンジの壺』や、瀬戸内や北陸を舞台にした傑作小説もある。でも、代表作『流転の海』をはじめ、関西を舞台にした小説の印象が強い。というのも、宮本輝自身、関西出身というのもあるだろう。
僕は大阪へ行くと、どこか宮本輝の小説を思い出す。今回は、彼の小説を思い出しながら、しっとりと夜の大阪を歩きたい。
「賑やかな大阪も大好きだけど、ゆっくりと夜の散歩もしたい」
そんな人にオススメの内容かと思う。
宮本輝のデビュー作で、太宰治賞を受賞した名作『泥の河』。この舞台となった界隈をぶらぶらしてみよう。
紹介するエリアは大阪・北浜: ゆっくり夜散歩をしよう
大阪の繁華街といえば、心斎橋や道頓堀などがある。その繁華街からちょっと離れた北浜エリアは、のんびりと夜の散歩にピッタリだ。
熱々の鉄板でお好み焼き: 大阪名物を楽しもう
久しぶりの大阪。せっかくだから、お好み焼きとビールで乾杯しようと妻と2人で夜の大阪を歩いてみた。妻もまた、宮本輝のファンで、彼の川シリーズももちろん読んでいる。
さて、北浜エリアで見つけた店に飛び込んでみよう。なかなかよさそうなお店が見つかった。そこには、鉄板で食べる美味しいお好み焼きと焼きそば、ビール、そして気さくな店員さんとの会話。楽しい大阪の夜が待っていた。
あらかじめ作ってくれたお好み焼きと焼きそばを熱々の鉄板にドーンと乗せてくれる。焼きそばもじゅうじゅうと焼き上がってきて、ソースのいい匂いが立ち込める。
東京にも、こういったスタイルのお好み焼き屋さんはあるんだろうが、僕たちには、とっても新鮮で大いに楽しんだ。
夜の中之島公会堂:ライトアップされた大正の建築を眺める
気分良くお店を出て、宿を目指してブラブラと歩いてみる。
僕はふと中之島が近いのに気がつき、道の先に目をやると、中之島公会堂(大阪市中央公会堂)(1913着工-1918竣工)が、綺麗にライトアップされていた。
中之島公会堂は、大正時代に作られた大阪でも有名な建物だ。アインシュタインが公演を行ったのも有名。
大正時代は、西洋風の洋館が流行ったため、その和洋折衷の雰囲気を持った佇まいは、ライトアップされ輝いて見える。ネオ•ルネッサンス様式でデザインされているが、19世紀末から20世紀初頭にウィーンで流行ったスタイルも垣間見れる。なかなか洒落た外観だ。
宮本輝の『泥の河』(1977)と土佐堀川
この辺りを歩いていると思い出すのが、宮本輝の名作『泥の河』。彼が太宰治賞を受賞してデビューした作品で、ここから彼の小説家としてのキャリアがスタートする。
舞台は、この土佐堀川界隈。戦後大阪の庶民の情景を描いている傑作。うどん屋の息子少年と小さな舟に暮らす少年の話で、とても印象に残っている作品だ。比較的短い小説なので、ここから宮本輝の世界へ入る人も多いかもしれない。
僕は夜の土佐堀川に立って、小説の中で出る少年が見つけた大きな鯉を思い出し、川を覗いてみるが、夜で真っ黒だ。でも、見えないほうが想像力をかき立てていい。
小説の最後のシーンは、小さな舟が去っていくのを少年が追いかけていく。小説のシーンを想像しながら川を眺める。
オススメのホテル
このエリアは静かで、地下鉄の便もよく、宿泊にオススメする。
僕はホテル京阪淀屋橋に泊まったが、綺麗だし朝食も美味しかった。
Photo and Writing by Hasegawa, Koichi and Shino
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