映画で旅するヴェネツィア|水の都をめぐる名作と写真紀行

夕暮れのグランドカナルにゴンドラが。

ヴェネツィアは、映画の中で何度も夢のように現れてきた街である。

大運河を進む船、サン・マルコ広場の光、狭い路地、水面に映る古い建物。現実の都市でありながら、どこか最初から映画のために用意された舞台のようにも見える。

船でヴェネツィア本島へ入ると、目の前には海に浮かぶ街が広がる。

石の建物が水辺に並び、橋が運河をまたぎ、船が人々を運んでいく。午後になると太陽が傾き、大運河の水面には、行き交う船の影と光がゆっくり流れていく。

ヴェネツィアは、実際に旅しても美しい。

けれど、映画を通して出会うヴェネツィアにも、また別の魅力がある。物語の中で見ることで、この街のロマンチックな表情、ミステリアスな表情、そして少し切ない表情が、より強く心に残る。

今回は、映画に登場するヴェネツィアを手がかりに、水の都の魅力を写真とともにたどってみたい。

007『カジノ・ロワイヤル』|ボンドがたどり着く水の都

ヴェネツィアが印象的に登場する映画として、まず思い出すのが『007 カジノ・ロワイヤル』である。

ダニエル・クレイグが初めてジェームズ・ボンドを演じた作品であり、007シリーズの中でも特に人気の高い一作だ。

物語の後半、ボンドとヴェスパー・リンドはヴェネツィアへ向かう。

緊張感のある物語の中で、ヴェネツィアの美しい風景が静かに映し出される。大運河を船で進む場面、歴史ある建物、高級ホテル、そして水の上に成り立つこの街の独特の空気。

ヴェネツィアは、ここでは単なる背景ではない。

美しく、危うく、どこか現実離れした街として、物語の結末に深い陰影を与えている。

ボンドとヴェスパーの関係を考えると、ヴェネツィアという舞台はとてもよく合っている。水に囲まれた迷宮のような都市で、愛と裏切り、希望と喪失が交差する。

華やかな観光地としてのヴェネツィアではなく、崩れそうな美しさを持つ街としてのヴェネツィア。

『カジノ・ロワイヤル』は、その表情をとても印象的に見せてくれる。

ヴェネツィアの大運河を進むゴンドラ
大運河をゴンドラでクルーズ。Photo by HASEGAWA, Koichi

『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』|冒険の入口としてのヴェネツィア

ハリソン・フォード主演の『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』にも、ヴェネツィアが登場する。

この作品では、ヴェネツィアは冒険の入口のような場所として描かれている。

水路、古い建物、教会、地下に隠された謎。ヴェネツィアという街は、考古学的な冒険物語ととても相性がいい。

街全体が古い記憶を抱えているように見えるからだ。

運河の上を船で進み、迷路のような路地を歩き、教会や広場に入る。どこかに秘密の入口があり、歴史の断片が眠っていてもおかしくない。そんな気配が、ヴェネツィアにはある。

映画では、サン・バルナバ教会周辺が印象的なロケ地として登場する。

実際のヴェネツィアを旅していると、映画の場面を思い出しながら歩けるのが楽しい。作品を観たあとで街を訪ねると、ただの観光地ではなく、物語の中を歩いているような感覚になる。

『ツーリスト』|観光映画として楽しむヴェネツィア

ヴェネツィアを観光映画として楽しめる作品といえば、ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーが出演した『ツーリスト』も忘れられない。

物語そのものはミステリー仕立てだが、この映画の魅力のひとつは、やはりヴェネツィアの風景である。

列車でイタリア本土からヴェネツィアへ向かい、サンタ・ルチア駅に到着する。駅を出ると、目の前に運河が広がる。

この瞬間は、実際にヴェネツィアを訪れる人にとっても忘れがたい。

鉄道で到着したはずなのに、駅前には道路ではなく水がある。そこから水上バスやボートに乗って街へ進んでいく。普通の都市とは違う入り方をすることで、ヴェネツィアに来たという実感が一気に高まる。

『ツーリスト』では、その観光客としての高揚感がとてもわかりやすく描かれている。

美しいホテル、運河を進む船、サン・マルコ周辺の華やかさ。映画として観ているだけでも、ヴェネツィアを旅しているような気分になれる。

ヴェネツィアの水上バスと運河
ヴェネツィアに行ったら、水上バスで運河を巡ってみたい。Photo by HASEGAWA, Koichi
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