シエナ写真紀行|中世の街並み、カンポ広場、ピチをめぐる旅

シエナ旧市街を歩く

シエナの魅力は、カンポ広場だけではない。

旧市街そのものが、とても美しい。

細い道を歩くと、左右には古い建物が迫り、石畳の道がゆるやかに続く。

ときどき坂になり、ときどき小さな広場へ出る。

この街では、まっすぐ目的地へ向かうよりも、少し迷うくらいがちょうどいい。

路地を曲がるたびに、違う光景が現れる。

壁の色、窓辺の影、店先の小さな看板、石畳の質感。

そうした細部が、シエナの旅を豊かにしてくれる。

シエナ旧市街の石畳の道
旧市街を歩こう。Photo by HASEGAWA, Koichi

中世の街を歩く楽しさは、時間の層を感じられることにある。

道の幅は広くない。

車が便利に走るためにつくられた街ではない。

歩く速度でつくられた街である。

だから、こちらも自然と歩く速度になる。

足元の石畳を見ながら、少しずつ進む。

その遅さが、シエナにはよく合っている。

シエナ旧市街の街角
シエナの街角。Photo by HASEGAWA, Koichi

地元のお店を覗いてみる

街歩きの途中で、地元のお店に入るのも楽しい。

シエナの路地を歩いていると、カンポ広場から少し入ったところに、パスタやワイン、食材を並べた店があった。

イタリアの街でこうした店を見つけると、つい足を止めてしまう。

店先には、色とりどりの食材が並んでいる。

乾燥パスタ、トスカーナのワイン、果物、野菜、瓶詰めのソース。

観光名所とは違う、生活の中のイタリアがそこにある。

旅先では、美術館や教会だけではなく、こうした食材店にも土地の文化が表れる。

何を食べ、何を買い、どんなものが日常に並んでいるのか。

店を少し覗くだけでも、その土地の暮らしが見えてくる。

シエナの路地にある食材店
カンポ広場から入った路地にあったお店。Photo by HASEGAWA, Koichi

シエナ名物のパスタ、ピチ

シエナで食べたいもののひとつが、ピチである。

ピチは、トスカーナ地方で親しまれている太い手打ちパスタで、シエナの郷土料理としてよく知られている。

見た目は太いスパゲッティのようだが、食べるともっと素朴で、もちもちとした食感がある。

噛むほどに小麦の味が感じられ、ソースとよく絡む。

シンプルなアーリオ・オーリオにも合うし、ニンニクの効いたトマトソースにもよく合う。

旅先で土地のパスタを食べると、その街の記憶が味として残る。

シエナの古い街並みを歩いたあとに、トスカーナワインと一緒にピチを食べる。

それだけで、とてもいい旅になる。

シエナ名物の太いパスタ、ピチ
ピチ。写真上の太いパスタ。Photo by HASEGAWA, Koichi

フィレンツェからシエナへ

シエナへは、フィレンツェから日帰りで訪れることもできる。

個人的には、フィレンツェからバスで向かうのが便利だった。

フィレンツェの駅周辺からシエナ行きのバスに乗り、トスカーナの風景を眺めながら丘の街へ向かう。

列車でも行くことはできるが、シエナは丘の上の街なので、到着後の動きやすさを考えると、バスが使いやすいこともある。

フィレンツェから少し足を延ばすだけで、まったく違う表情のトスカーナに出会える。

フィレンツェがルネサンスの華やかな都市だとすれば、シエナは中世の時間が残る街である。

その違いを味わうためにも、フィレンツェ滞在中にシエナへ向かう旅はとてもおすすめである。

シエナの記憶

シエナは、歩いてこそ魅力がわかる街である。

カンポ広場の美しい扇形。

中世の石畳。

細い路地。

古い建物の壁。

食材店に並ぶ乾燥パスタ。

そして、トスカーナの素朴なパスタ、ピチ。

華やかな観光地というより、街そのものの形や時間が美しい。

シエナを歩いていると、都市とは人間が長い時間をかけてつくった風景なのだと感じる。

カンポ広場は、その象徴である。

人が集まり、座り、話し、祭りを行い、時代を越えて使い続けてきた場所。

そこには、ただ眺めるだけではない、都市の記憶がある。

シエナは、トスカーナの丘の上に残る、中世の美しい時間である。

筆者について

長谷川浩一|美術史家・講師・執筆

旅先で出会った街角の光、夜の気配、建築や風景に残る時間の層を、
写真と言葉で記録しています。
東京では西洋美術史講座 Edogawa Art Salon, Tokyo を開き、
noteでも美術や旅にまつわる文章を書いています。

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2件のコメント

パスタ好きですが、ピチ って食べたことないので、ぜひ味わってみたいです。
コロナが落ち着いたら、シエナに行ってみたい!

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