シエナ写真紀行|中世の街並み、カンポ広場、ピチをめぐる旅

イタリア紀行、今回の旅先はシエナである。

トスカーナの丘の上に広がるこの街には、中世の時間が今も濃く残っている。

細い石畳の道、坂道、古い建物、レンガ色の壁、そして街の中心に広がるカンポ広場。

フィレンツェのような華やかなルネサンス都市とは少し違い、シエナには、もっと重層的で静かな中世の雰囲気がある。

迷路のような旧市街を歩いていると、現代の街を旅しているというより、少しだけ時間の奥へ入り込んでいくような感覚になる。

今回は、シエナ旧市街、カンポ広場、映画に登場する街の記憶、そして名物パスタのピチを手がかりに、この美しい中世都市を歩いてみたい。

シエナ旧市街を歩く
シエナを歩く。Photo by HASEGAWA, Koichi

中世の街シエナへ

シエナは、トスカーナ地方を代表する美しい街である。

フィレンツェから日帰りで訪れることもできるが、できれば少し時間を取って、ゆっくり歩きたい街だ。

この街の魅力は、名所だけではない。

むしろ、名所から名所へ急いで移動するよりも、何気ない路地を歩く時間にこそ、シエナらしさがある。

坂道を上り、細い道を曲がり、ふと視界が開ける。

古い建物の壁に光が当たり、石畳がゆるやかに続いていく。

そのひとつひとつの風景に、中世から続く街の時間が感じられる。

カンポ広場|人間がつくり出した絶景

シエナを語るうえで欠かせない場所が、カンポ広場である。

ヨーロッパの街を歩けば、多くの都市で広場に出会う。

教会の前の広場、市庁舎前の広場、市場の広場。

広場は、ヨーロッパの都市にとって、人々が集まり、語り、祝祭を行い、政治や生活が交差する場所である。

その中でも、シエナのカンポ広場は特別だと思う。

広場は扇形に広がり、周囲の建物がそれをやわらかく包み込んでいる。

地形に寄り添うように傾斜し、広場全体がひとつの大きな器のようにも見える。

整然としていながら、硬すぎない。

壮大でありながら、人が座り、寝転び、話し、眺めることのできる親密さがある。

カンポ広場は、人間がつくり出した絶景である。

シエナのカンポ広場
有名なカンポ広場。人間が作り出した絶景。Photo by HASEGAWA, Koichi

カンポ広場に流れる時間

カンポ広場に立つと、シエナという街の中心に来たことがよくわかる。

広場へ向かって道が集まり、人の流れが集まり、視線もまた広場へと吸い込まれていく。

この広場は、ただ美しいだけではない。

街の記憶を抱えた場所である。

シエナの人々の暮らし、祭り、政治、商業、祈り、誇り。

そうしたものが、広場の形の中に積み重なっている。

観光客としてそこに立っていても、ここが長いあいだ街の中心であり続けたことは自然に伝わってくる。

石の色、建物の高さ、広場の傾斜。

そのすべてが、シエナの時間を静かに語っている。

映画『007 慰めの報酬』とシエナ

シエナが印象的に登場する映画に、ダニエル・クレイグ主演の『007 慰めの報酬』がある。

映画冒頭の激しいアクションから、舞台はシエナへと移っていく。

中世の街並み、石造りの建物、狭い路地、そしてカンポ広場。

シエナの古い都市空間が、ボンド映画の緊張感とよく合っている。

ダニエル・クレイグ版のボンドには、どこか鋭く、傷つきやすく、無駄のない硬質な雰囲気がある。

その雰囲気が、シエナの古い石の街並みと重なる。

華やかな観光地としてのイタリアではなく、陰影のある中世都市としてのイタリア。

『慰めの報酬』のシエナには、その魅力がある。

映画を観たあとでシエナを歩くと、街の階段や屋根、広場が、少しだけ映画の中の風景に見えてくる。

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2件のコメント

パスタ好きですが、ピチ って食べたことないので、ぜひ味わってみたいです。
コロナが落ち着いたら、シエナに行ってみたい!

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