夜の散歩シリーズ:小樽夜散歩 小樽運河とガス灯が灯るトワイライトへ

夜の小樽運河

夜の小樽運河の美しさ

とはいえ、僕が本当に見たかったのは、昼の小樽運河ではない。
目当ては、夜の小樽運河だった。
だから、夜まで待つことにした。

夕方が近づくと、運河のまわりの空気も少しずつ変わっていく。
倉庫の窓に灯りが入り、街の色がゆっくりと落ち着いてくる。
昼間にはまだ輪郭だけだった景色が、夕暮れの中で少しずつ奥行きを持ちはじめる。

夕暮れの小樽。運河周辺をぶらつく。

そして、日が沈んでしばらくしたころ、小樽運河に魔法がかかりはじめる。

小樽運河に魔法がかかる時

夜、街灯の光や店からこぼれる光がつくる景色は、本当に美しい。
僕は昔から、光には風景を変える力があると思ってきた。
そしてその光の魔法は、小樽運河にもたしかに降りてきた。

運河沿いに立つガス灯に、
「ジジジジィー」という小さな音がして、火が入りはじめる。
この瞬間がいい。
だいたい日没から15分から20分後。
いわゆるトワイライトタイムである。

運河沿いにあるガス灯。

街にも灯りがともりはじめ、運河沿いのガス灯とともに、小樽の風景は昼とはまったく違うものに変わっていく。
昼間にはただの水路のように見えた運河が、夜になるとようやくその本来の美しさを見せはじめる。

この運河は、海岸の沖を埋め立ててつくられたため、ゆるやかに湾曲している。
そのカーブが、夕暮れから夜にかけての光を受けると、風景の中に独特のやわらかさをつくり出す。
そして倉庫群からこぼれる光が水面に揺れはじめると、小樽運河はようやく「見たかった景色」になる。

運河沿いにある倉庫群。

小樽運河には、古くからの倉庫群が立ち並んでいる。
今ではレストランやバーとして使われている建物も多いが、それでもそこには昔の港町の記憶が残っている。
その窓から漏れる光が、水面の上で揺らめく。
都市の夜景のように強く光るのではなく、小樽の夜はもっと控えめで、もっと静かだ。
だからこそ、深く美しい。

ガス灯に火が入りはじめる。

小樽運河を歩くなら、昼よりも、夕暮れから夜にかけてをおすすめしたい。
この街はギラギラと自分を主張するような光は出さない。
控えめに、けれど確かに、街全体が幻想の方へと傾いていく。
その変化を眺めながら歩く時間こそ、小樽の夜散歩の醍醐味なのだと思う。

また別の街でも、こんなふうに灯りが風景を変えていく瞬間を歩いてみたい。

Writing and Photo by Hasegawa, Koichi

筆者について

長谷川浩一|美術史家・講師・執筆

旅先で出会った街角の光、夜の気配、建築や風景に残る時間の層を、
写真と言葉で記録しています。
東京では西洋美術史講座 Edogawa Art Salon, Tokyo を開き、
noteでも美術や旅にまつわる文章を書いています。

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