はじめに
今回は、歴史あるイギリス最古のイン(Inn)と、伝説の英雄ロビンフッドで知られる街・ノッティンガムに焦点を当ててみます。
「イン(Inn)」という言葉は、実は中世までさかのぼる歴史があり、もともとは旅人に食事や休息の場を提供する宿泊施設の名前でした。現在、ホリデー・インや東横インなどでおなじみの「イン」という言葉の由来がここにあります。
その最古のインが、イングランド中部に位置するノッティンガムに今も残っているのです。もしイングランド中部を訪れる機会があれば、古の面影を感じながら、この歴史あるインをぜひ訪れてみてください!
Ye Olde Trip to Jerusalemーオールド・トリップ・トゥ・エルサレム
ノッティンガムには「古きエルサレムへの旅」という名の歴史あるパブがあります。このパブは、ロビンフッドが攻め入ったとされるノッティンガム城のすぐそばに位置し、ノッティンガムの魅力的な観光スポットの一つです。
かつては「イン(宿泊施設)」として旅人を迎えていましたが、現在は宿泊機能はなく、パブ(大衆酒場)として営業を続けています。
中世にはすでに「宿泊ができるパブ」としてのインが存在していたとされ、今回ご紹介するオールド・トリップ・トゥ・エルサレムも、18世紀までは「プリグリム」というインとして知られていました。
オールド・トリップ・トゥ・エルサレムの歴史は、1189年まで遡るそうで、時期的には、1190年夏にリチャード獅子心王が出征した第三次十字軍の頃。
パブの名称も、十字軍遠征の時期と同じ起源を持つため、エルサレムの名を冠した名称になったのでしょうね。
※ 塩野七生さんの『十字軍物語』。ヨーロッパ史好きにはたまらない内容です。十字軍の栄枯盛衰が描かれますが、僕は特に第一次十字軍がエルサレムへ到着するシーンが印象に残っています。彼らは、はるばるヨーロッパからエルサレムまで従軍しますが、聖地であるエルサレムが見えた時の十字軍の面々の気持ちは、いかほどであったでしょう。挿絵と一緒によく表現されています。
リチャードが活躍するのは後半。長編ですが、読みやすく面白いですよ。
十字軍物語 第一巻―神がそれを望んでおられる―(新潮文庫):全4巻の長編。『ローマ人の物語』で有名な塩野さんの作品。オススメです。
ノッティンガム城はキャッスルロックと呼ばれる岩山の上に建てられていますが、このパブはその崖の麓に位置し、建物の一部は岩をくり抜くように造られているため、その構造自体がとても興味深いものになっています。
さっそく、そんな歴史の背景を頭に入れてパブの中を探索してみましょう。入り口を入ると、歴史の重みが感じられる独特な雰囲気が広がっています。奥に進むと、まるで洞窟の中にいるような感覚に包まれる空間が現れます。岩を削り出して作られた内部には、岩肌が露わになった部分や吹き抜けの天井が見られ、思わず「城まで続いているのでは?」と思ってしまうほどです。
とにかく、この場所は歴史とロマンがたっぷり詰まったユニークな空間です。
歴史の余韻を感じながらビールを一杯
探索を終えたら、ぜひビールで一息つき、ブリティッシュ・フードも楽しんでみましょう。パブで味わう料理とビールは、この特別な夜の締めくくりにふさわしいものです。ひょっとしたら、かつてこの場所には、十字軍に向かう諸侯や騎士たちがエルサレムへの道中に立ち寄ったかもしれません。そんな歴史のロマンに思いを馳せながら過ごすひとときは、何ものにも代えがたい体験となるでしょう。
イギリスを訪れる際や、在住の方がイングランド中部を旅する機会があれば、ぜひこのパブを訪れてみてください。特におすすめの時間帯は夜。周辺には歴史的な建物が立ち並び、夜は静寂に包まれて一層雰囲気が増します。
ノッティンガムに行こう!
さあ、イギリスの魅力あふれる街、ノッティンガムをご紹介します。ノッティンガムは、ロビンフッドの伝説や歴史的な建物だけでなく、二つの有名大学を擁する国際色豊かな学生の街でもあります。世界各地から多くの学生が集まり、活気あふれる文化と多様性が交錯するこの街は、訪れるたびに新しい発見がある魅力的な場所です。
歴史あるサッカーチームがある街
イギリスといえばサッカーですね。
ノッティンガムには、ノッティンガム・フォレストFCとノッツカウンティFCという2つのサッカークラブがあります。
中でもフォレストは、その昔リーグ優勝やヨーロッパでも勝ったことのある由緒あるチームです。
フォレストに関しては、サッカーに詳しい人は、ご存知かもしれません。近年はレスターのような例もあるので、今後に期待!
ちなみにレスターも近いので、レスターでサッカーを観てノッティンガム泊もいいですよ。
ロビンフッドの舞台になった街
最近、久しぶりにケビン・コスナー主演の名作ロビンフッド(1991) を観ました。この映画でノッティンガムを知ったという方もいらっしゃるかもしれないですね。ロビンフッドと言えば、中世の十字軍の時代の話。またまた十字軍が出ましたね。
ロビン・フッド(字幕版):ケビンコスナー主演の名作。主題歌も名曲です。
ロビンフッドは、ノッティンガム郊外のシャーウッドの森に住んでいるアウトロー集団のボスとして物語に登場します。圧政に苦しむ民衆の味方。こういった物語は、日本にもありますよね。
ノッティンガム:場所と行き方
電車で:ロンドンからはセントパンクラス駅から電車で約2時間。
飛行機で:日本からはロンドン・ヒースロー、あるいはバーミンガム空港が近い。イーストミッドランズ空港は、ローコスト・エアラインが多く発着しているため、ヨーロッパからは便利です。
自動車で:M1が走っています。
Photo and Writing by Hasegawa, Koichi and Shino
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