ゴッホの下宿にて:最後の部屋の記憶
それでは、ゴッホがオーヴェル・シュル・オワーズで最後に暮らしていた部屋をご紹介しましょう。この小さな屋根裏部屋には、彼の最期の日々の記憶が静かに息づいています。
この村での滞在中、ゴッホは精神科医ポール・ガシェとその家族との交流を通して、束の間の安らぎを感じていたようです。美しい自然に囲まれながら、彼は筆を取り続け、多くの作品を残しました。穏やかな時間の中に、心の平穏を見出そうとしていたのかもしれません。
けれども、その静けさは長く続かず、再び襲ってきた深い絶望の波に、彼は飲み込まれてしまいます。やがて彼は、この部屋で最期を迎えるのです。
ゴッホの晩年の作品には、そんな複雑な感情が滲み出ています。痛みと苦悩、そしてわずかな希望。そのすべてがこの部屋の空気に溶け込んでいるように感じられるでしょう。訪れた際には、彼がこの空間に託した思いにそっと耳を澄ませてみてください。彼のアートと人生の深い断片に、静かに触れることができるはずです。
※ガシェ医師については別記事にも書きました。
ゴッホの最後
1890年7月27日、ゴッホは拳銃で胸を撃ちます。この拳銃はどこで手に入れたかは、不明みたいです。自殺した時は、拳銃の弾丸が心臓をそれたため、即死を免れました。失神してから目が覚めた彼は、まだ自分に息があることに気がつきます。そして、現場から自力で下宿に戻り、二階にある部屋まで戻ります。下宿の人もゴッホの帰りが遅いのと、様子が変なところからゴッホの部屋に駆けつけたそうです。すぐに地元の医者を呼び治療にあったそうです。

ゴッホは、そこでパリにいるテオとガシェ医師をここへ呼ぶように頼んだそう。


手当をした医師が診察したときは、弾丸が胸の中にまだ残っていたのが確認されました。当時の医療的観点から、手術をするより、そのまま弾丸を残すのが通例だったみたいです。
そして、翌日の昼にはテオが到着します。涙ながらにゴッホは、テオに語りかけたそうです。テオはゴッホの展覧会を企画しているなど、明るい話題を続けたそうです。

ゴッホはテオの腕に抱かれたまま日付が変わった夜半に亡くなります。まさに壮絶な彼の最後でしたが、愛する弟テオの腕の中で息を引きとるという一つの願いは叶えられました。
ゴッホの部屋を訪ねて感じたのは、とても小さな部屋だということ。彼は最後自力で二階の部屋まで帰りましたが、生きて部屋を出る事はもうなかったんですね。

37年という短い人生を送ったゴッホですが、その作品と壮絶な人生は今なお多くの人々の心に深く響いています。

ゴッホが描いた絵には、ただの「美しさ」では語りきれないものがあります。そこには、彼の深い苦悩や揺れ動く感情、そしてそれを乗り越えようとする強い生命力が刻まれています。彼の作品は、まるで彼の内面そのものをキャンバスに映し出したようで、観る者の心に強く訴えかける力を持っているのです。
Photo and Writing by Hasegawa Koichi and Shino
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