今回紹介するのは、ヴェネツィアのカフェ・フローリアン。
フローリアンは、カフェ文化の歴史が深いヨーロッパにあって、特に有名なカフェなんです。
この歴史あるカフェは、アートとも関係があるんです。フローリアンと現代アートとの関係を紹介しましょう。
目次
1. 最古のカフェであるフローリアンとカフェ・ラテ
創業は1720年12月29日。場所は創業時と変わらずにサン・マルコ広場南側にあります。
フローリアン創業以前にもコーヒーを提供する店はありました。
しかし、社交の場であったり、ゆっくりコーヒーを楽しむ場というものの始まりは、フローリアンからなんです。
「フローリアンが発祥」で有名なのが、カフェ・ラテ。
今でこそコーヒーにミルクを入れて飲むのは当たり前ですが、いわゆるカフェ・ラテ(フランスではカフェオレ)は、ここから始まったそう。
サンドイッチなどの軽食は少し高いですが、フローリアンの雰囲気の中で楽しむのも、いい思い出になるはず!いつかヴェネツィアへ行くことがあれば、ぜひ。
2. 社交の場としてのカフェ文化:ヨーロッパのカフェ
交流の場、サロン、議論の場としてのカフェは、後のパリやウィーンのカフェの例にもあるように、芸術家や政治家、その他有名人に好まれ、その後のヨーロッパ文化に根付いていきます。
ヨーロッパでは、芸術家がカフェに集まっては議論をして様々な文化を牽引しました。
例えば、19世紀パリで有名なカフェの一つカフェ・ゲルボアには、エドゥアール・マネを中心にドガや写真家ナダール、文筆家のゾラ、若かりしモネやルノワール、セザンヌが出入りしたそう。モンパルナスのラ・ロトンドでは、ピカソやモディリアーニが出入りしていました。
もちろん、ヴェネツィアのフローリアンにも沢山の著名人が訪れています。
例えば、画家のクロード・モネやアンディー・ウォーホル、詩人のゲーテ、音楽家のリヒャルト・ワーグナー、作家のディケンズ、マルセル・プルースト、哲学者のニーチェ、俳優のチャーリー・チャップリンなど、そうそうたる面々ですね。
※ バルセロナの「四匹の猫」も19世紀から20世紀初頭のバルセロナにあって、アートシーンを牽引したカフェでした。詳しくは下のリンクから。
3. フローリアンと現代美術との関係:ヴェネツィア・ビエンナーレ
では、カフェフローリアンと現代アートについてをみていきましょう。
2年に1度行われるヴェネツィア・ビエンナーレは、現代美術において重要な展覧会の1つです。
ヴェネ
ビエンナーレが行われる時は、世界中から美術関係者がこの街に押し寄せます。現代美術においてヴェネツィアは、バーゼル、ロンドン、ニューヨークなどで行われるアートフェアとともに世界を牽引するネームバリューを持っているんですね。
この国際的な展覧会の始まりは、1893年のカフェ・フローリアンの The Senate Roomでの会合から生まれたそうです。
当時のヴェネツィア市長であったリカルド・セルヴァティコ(Riccardo Selvatico)と同席した知識人やアーティスト達は、ウンベルト一世とマルゲリータ王妃の銀婚式を祝う美術展覧会を企画しました。
このアイディアは、1895年の実現。
その後は国際政治の勢力争いの構図が出てきたり、有名な画家の回顧展などを行いながら定着していきます。
大戦中は、ファシスト党がビエンナーレをプロパガンダ的な用途に使ったりしましたが、大戦後は、現代のような前衛美術や現代アートを展示する国際的展覧会として復活しました。
こうして、今も世界中が注目する現代アートの展覧会としての権威を持つようになります。
※ 吉阪隆正設計による日本館は、1956年に完成しています。日本は1952年からビエンナーレに参加しています。
ビエンナーレの時期以外にもフローリアンをアートスペースとして使う現代アーティストやデザイナーがいます。
これは1988年以降から始まった試み。Bruno Ceccobelli, Mimmo Rotella, Pietro Ruffoなどのイタリア人現代作家たちや、イタリア人デザイナーのAldo CibicがフローリアンのThe Chinese Roomでインスタレーションをしたりと、このカフェは現代アートとのつながりがあって面白いんですよ。
フローリアンは、最先端のアートやデザインという繋がりを持ちながら、今なお沢山の人にコーヒーを提供しています。そして、もちろん店内を飾る歴史的な装飾や絵画も一緒に楽しみたいです。
参考
フローリアンのメニューやイベント情報が載っています。
https://www.caffeflorian.com/en/
ヴェネツィアの気分に浸れる音楽を紹介
カフェとアートを紹介しました。最後に少しヴェネツィア気分に浸れる音楽を紹介します。
まずはリストのヴェネツィアをテーマにしたピアノ作品集。
また、ヴェネツィアといえばヴィヴァルディですね。もし訪れる機会があれば、ヴィヴァルディのコンサートを聴くのもいい思い出になります。
↓ヴァイオリンの女王的な存在であるアンネ=ゾフィー・ムターのヴィヴァルディを堪能できます。
Photo and Writing by Hasegawa, Koichi and Shino
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