アメリカを写真で感じる:名写真家と彼らの傑作写真集
アメリカという広大な国は、ただ旅するだけでなく、写真を通してもその多様な風景やカルチャーを体感できます。今回は、アメリカを切り取った名写真家たちの作品と、まるでその場にいるような感覚に浸れる写真集をご紹介します。
ウィリアム・エグルストン(William Eggleston) : William Eggleston’s Guide
まず、ストリートフォト好きには欠かせない名前、ウィリアム・エグルストン。エグルストンの撮る「アメリカ」が好きな人、多いと思います。人気のフォトグラファーですね。
カメラ片手に街を歩くような日常的な光景を、彼はそのまま「アメリカのエッセンス」として切り取ります。彼の作品には、生まれ故郷のメンフィス、そしてミシシッピーやアラバマといった南部の風景が多く登場します。古びたガソリンスタンド、手入れの行き届いていない庭、日が暮れる前の空。こういった「何気ない瞬間」をカラー写真で捉え、アートとして昇華させた先駆者です。
それまでモノクロ写真が主流だった写真芸術の世界でしたが、彼はモノクロからカラー写真へと移行します。つまり、カラー写真をアートとして見せはじめた先駆者的な位置にいるのが、エグルストンといえるでしょう。
彼の写真集を開けば、アメリカ南部の湿気を帯びた空気や、錆びた建物の匂いまで感じられるでしょう。エグルストンの「アメリカ」は、ただの風景写真ではなく、見る者に深い感情を呼び起こす力があります。彼の写真が持つリアルさと静けさに、多くのファンが魅了されています。
彼の写真集はどれも傑作で、名作。ぜひ手に取って眺めてみてください。とってもいいですよ。
スティーブン・ショア(Stephen Shore): Uncommon Places
大好きなフォトグラファーであるスティーブン・ショア。彼はアメリカ国内を旅しながら、エグルストン同様にカラー写真を沢山撮りました。彼も、例えばガソリンスタンドであったり、田舎の街角であったり、まさにアメリカンな原風景を撮っていました。
僕は街角を撮るのが好きなんですが、これは「文化」というか、もっと言うと「人間の創ったもの」に興味があるから。ショアの写真に惹かれるのは、何気ない自然風景の中にも、何らかの「人間が創ったもの」が入っていることが多いからです。
例えば自動車なんかは、まさに時代を象徴していますし、街角のスナップからは、その当時の生活感がどことなく現れていて、とてもいい雰囲気を出しています。風景の中にあるこの「人間が創ったもの」いいですね。ショアの写真を見てると、そんな気分になれます。
※オススメカメラ:Fuji Film X-S10:富士フィルムのカメラは、そのカラーバリエーションにとても定評があります。フィルムメーカーならではの、美しいカラー写真が楽しめます。
ロバート・アダムス(Robert Adams):The American Silence
アメリカの風景写真を語るうえで外せないのが、ロバート・アダムス。彼の写真は見るほどに味が出てきます。
アダムスの作品は、自然の風景の中に「アメリカンな人工物」を同居させている点で、ショアと似ていますね。モノクロで描かれる広大な西部の風景が特徴的です。例えば、ロサンゼルスの乾いた大地、デンバーやコロラドの自然に溶け込む人工物、そんなアメリカらしさが彼の写真に静かに宿っています。どこか冷静でありながらも、人の営みがにじみ出るその風景には、時間が止まったかのような静寂が漂います。
アダムスの写真集を眺めていると、アメリカの大地に広がる「静けさ」に飲み込まれていきます。荒野を走る一本道、遠くに見えるショッピングモールや住宅街。これこそが、誰もが想像する「アメリカの風景」。自然と文明が交錯する瞬間が、モノクロというシンプルな手法で完璧に表現されています。
田舎の風景であったり、いかにもアメリカらしい原野の中にある道路や、ショッピングセンターや住宅街などがとても静かな雰囲気の中に撮影されています。ジィーッと見てみてください。静かな風景に引き込まれていくでしょう。いいですよ!写真を通して「アメリカの魂」を感じたい方に、ぜひ手に取っていただきたいです。写真集を眺めるたびに、新しいアメリカを発見できるはずです。
エドワード・スタイケン(Edward Steichen)
写真の出現は、絵画へ大きな影響を与えましたが、その逆も然りです。ここで絵画的な写真を紹介します。
19世紀から20世紀初頭までは、いわゆる絵画的、もっと言うと印象派的な写真が流行しました。これはいわゆるピクトリアリスムといわれます。特徴としては、印象派的なぼかしであったり、構図を絵画作品から参考にしたなど色々とあります。遠景をぼかして、近景にはっきりした物を置いたりし、コントラストを強調する点などは、印象派ぽい雰囲気を写真に出します。
絵画的な構図を拝借する点は、当時の写真家にも色々と考えがあったみたいですが、ともあれ、当時とても雰囲気があって、ステキな写真が沢山生まれました。
エドワード・スタイケン(1879-1973)は、このピクトリアリスム写真で成功した写真家です。ニューヨークのフラットアイアンビルを撮った『フラットアイアンビルディング』(1904)が有名ですね。とても雰囲気のある作品です。
Ernst Haas: New York in Color, 1952-1962
エルンスト・ハース(1921-1986)によるカッコいい写真集です。ニューヨークを感じるにピッタリの写真集。
彼はオーストリアのウィーンで生まれ、1950年にアメリカへ渡ったフォトグラファーです。
当時ビザがなかなか降りませんでしたが、マグナムフォトの有名な写真家であるロバート・キャパが、ハースをマグナムフォトへ招きます。結果、ハースは、アメリカへ入国を果たします。
ハースのアメリカでの最初の写真は、ニューヨーク・エリス島での移民審査を待つ人々であったと言われています。
フレッド・ヘルツォーク(Fred Herzog): Modern Color
同じく有名なストリートフォトグラファーであるフレッド・ヘルツォークも外せません。彼はドイツのシュトゥットガルト近郊で生まれますが、カナダで活動をした写真家です。よって活躍の場は、バンクーバーがメインとなります。「アメリカを感じる」という趣旨からは少し外れますが、60年代以降の北米の雰囲気がプンプンします。いいですよー。
まずは有名な写真集である『Modern Color』。彼は1953年にバンクーバーにやってきます。彼の50年代から60年代のカラー写真は、70年代の写真家へ影響を与えたと言われます。
彼は、細かなテクニックよりも、内容を重視していました。どんなコンテンツがあるかという事ですが、これは今の世界に生きている我々にもとても面白い写真ですね。
『Photograph』の表紙にもなっている『包帯を巻いた男』(1968)などは、その最たるものかもしれません。包帯を巻いた男とそれをジッと見る婦人。「何があったのだろう」と気になりますね。
ヘルツォークが見つけたこういったシーンは、見る我々にも時間的な前後関係やコンテンツを提示してくれているようで、とても面白いです。
オススメの写真本
写真の撮り方としてオススメの本をちょっと紹介します。
プロの撮り方 構図を極める:写真の構図の決め方に焦点をあてた一冊。写真を撮る上でのヒントが沢山あります。オススメの一冊。
写真の撮り方レッスンブック:写真を実際撮るときは、色々と覚えることがあります。構図もですが、例えば絞りやISOなどなど。この本は詳しく解説しています。
ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 露出を極める 改訂新版 (ナショナルジオグラフィック):写真で大事な露出を極めてみましょう。段々とカッコいい写真が撮れるようになってくるはず。
Writing by Hasegawa, Koichi
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