レオナルド・ダ・ヴィンチが愛した最期の地へ:クロ・リュセ城とアンボワーズの魅力を巡る旅

天才レオナルド・ダ・ヴィンチの終焉の地、アンボワーズとクロ・リュセの魅力に迫る

1452年、イタリア・トスカーナに生まれたレオナルド・ダ・ヴィンチ。その人生は芸術、科学、そして探求心に満ち、イタリアの各都市を巡る旅のようなものでした。

しかし、彼が晩年に選んだ終焉の地は意外にもフランスの小さな街、アンボワーズだったのです。ロワール川が穏やかに流れるこの街には、フランソワ1世の厚意でレオナルドに与えられた館、クロ・リュセがありました。ここで彼は創作活動を続け、1519年に静かにその生涯を閉じました。

クロリュセにて

トスカーナで生まれ、フィレンツェやミラノといったイタリア文化の中心地を転々とした彼が、なぜフランスで最後の日々を過ごしたのでしょうか。それは、当時のフランス国王フランソワ1世がレオナルドを深く尊敬し、彼の天才をフランスに迎え入れるためにあらゆる援助を惜しまなかったからです。

現在、クロ・リュセは訪れる人々に彼の人生と創作の足跡を垣間見せてくれます。館内には彼のスケッチをもとにした発明品の模型が並び、広大な庭園には自然と科学への好奇心をかき立てる仕掛けが点在しています。レオナルドが最後に過ごした空間と庭園を歩けば、彼が愛した自然への敬意と、その探究心がいまも生き続けていることを感じることができるでしょう。

アンボワーズとクロ・リュセは、レオナルド・ダ・ヴィンチが残した足跡と、彼の創造の精神に満ちた特別な場所です。イタリア生まれの天才の終焉の地として、この地はアートファンにとっても心打たれる訪問地となるはずです。

レオナルド・ダ・ヴィンチが晩年を過ごしたクロ・リュセ城とフランソワ1世との絆

1516年、レオナルド・ダ・ヴィンチはフランス国王フランソワ1世の招きにより、イタリアからアンボワーズへと移り住みました。彼に提供された居住地が、アンボワーズのクロ・リュセ城(Château du Clos Lucé)です。

フランソワ1世は芸術と知識を愛し、イタリア・ルネサンスの巨匠であるレオナルドに深い敬意を抱いていました。二人の関係は単なる patronage(パトロン関係)を超えた、友情にも似た特別なものだったと言われています。

クロ・リュセ城では、現在もレオナルドが使っていた部屋が公開されており、彼の創造的な活動が行われた空間を実際に見学できます。書斎や寝室には、彼が最後のアイデアを練ったとされるデスクや、晩年のスケッチやメモが再現され、500年前の天才がここで暮らし、作品を生み出していたことを実感できる仕掛けがされています。

また、彼が考案した数々の発明品を実物大で再現した模型が展示されており、レオナルドのアイデアを目の当たりにすることができる点も、見どころのひとつです。

さらに、広大な庭園には、自然への探求心と科学への情熱が融合した展示が点在し、レオナルドの精神に触れながら散策を楽しめます。フランソワ1世がレオナルドをこの地に招いたことで、フランスとイタリアの芸術文化が交流し、彼の影響は今もフランス文化の中に息づいています。

クロ・リュセに入ってみよう

クロ・リュセとフランス王フランソワ1世との関係には、歴史のロマンが漂います。アンボワーズ城からクロ・リュセへの直通の地下通路を通り、王自らがたびたびレオナルドを訪ねていたと言われています。この通路の存在は、レオナルドがフランス王にとってどれほど特別で、また庇護されていたかを物語っています。フランソワ1世のもとで、レオナルドはかつてないほどの自由と尊敬を享受し、晩年の穏やかな生活を送ることができました。

また、史上初の美術史家とも称されるジョルジョ・ヴァザーリは、著書『画家・彫刻家・建築家列伝』において、レオナルドがフランソワ1世の腕の中で息を引き取ったという感動的な逸話を記録しています。この記述の真偽ははっきりしないものの、二人の間には深い信頼関係と友情があったことを示唆しており、二人の関係が単なる patronage を超えた特別なものだったと感じさせます。

クロ・リュセの敷地内にはレオナルドらしいオブジェが。

イタリアからフランスへ運ばれた『モナリザ』:ルーブルの至宝となるまでの道のり

1516年、レオナルド・ダ・ヴィンチがフランスに渡る際、彼は三つの傑作を携えてきました。そのうちの一つが、いまやルーブル美術館の象徴とも言える「モナリザ」です。この他に「聖アンナと聖母子」や「洗礼者ヨハネ」も含まれ、これらはすべてレオナルドの創造の頂点を示す作品たちでした。

レオナルドの死後、「モナリザ」は彼の弟子に相続されましたが、後にフランソワ1世がこれを購入し、フランス王家のコレクションに加えます。絵画はまずフォンテーヌブロー宮殿に収蔵され、その後ルイ14世の時代にヴェルサイユ宮殿へと移動しました。フランス革命や戦争の変遷を経てもなお、この貴重な作品は守り継がれ、ついにルーブル美術館に収蔵されるに至ります。

「モナリザ」は未完成とされていますが、レオナルドはこの作品を生涯手元に置き、フランスに来てからも筆を加え続けたといわれています。彼の手によって絶え間なく進化し続けたこの微笑みは、時を超えて人々を魅了し、ルーブルの至宝として輝き続けています。

「モナリザ」がイタリアを出発し、フランスに渡り、ルーブルの象徴となるまでには、歴史と王朝を越えた壮大な旅があったのです。

クロ・リュセの中庭からアンボワーズを眺める

いつか訪ねたいアンボワーズのクロ・リュセ

クロ・リュセ城の見学コースでは、かつてレオナルド・ダ・ヴィンチも眺めたであろう中庭を、私たちも同じように見渡すことができます。遠く異国からやって来た彼が目にした景色に想いを馳せながら、異国のフランスでこの美しい風景を眺めるという点で、私たちはレオナルドと同じ立場にいるのかもしれません。ここには、ルネサンス期の天才の感性とその時代の空気を追体験する特別な瞬間が詰まっています。

クロ・リュセの場所

クロ・リュセを後にしたら、アンボワーズの街を散策してみてはいかがでしょうか。中世の雰囲気が色濃く残るこの小さな街には、魅力的なレストランやカフェが点在し、ロワール地方のワインを味わうのにも最適な場所です。静かで情緒あふれるアンボワーズの街角を歩きながら、レオナルドが愛した風景を五感で楽しむことができるでしょう。

アンボワーズへは、主にパリからのアクセスが便利です。以下に一般的な行き方を紹介します。

1. パリから鉄道で行く方法

  • パリ モンパルナス駅またはパリ オステルリッツ駅からTGVまたはインターシティで約1時間~1時間半**でトゥール駅(Tours)へ移動します。
  • トゥール駅でアンボワーズ行きの地域列車(TER)に乗り換え、約20分でアンボワーズ駅に到着します。

2. パリから車で行く方法

  • パリからアンボワーズまでは約220km。所要時間は約2時間半から3時間です。
  • A10号線の高速道路を利用し、トゥール方面へ進みます。トゥール周辺でD751号線に入りアンボワーズに向かうルートが一般的です。

3. ツアーバスでのアクセス

パリ発のロワール渓谷の観光ツアーに参加する方法もあります。日帰りツアーではアンボワーズやクロ・リュセ城、他のロワール渓谷の城を巡るプランも多くあります。個人的にはこれが一番楽でオススメです。

4. 地元の交通手段

アンボワーズの駅からクロ・リュセ城や市内観光は徒歩でも可能です。また、駅周辺にはタクシーもあり、アンボワーズの街並みを楽しみながら散策するのもおすすめです。

アンボワーズは、パリからの日帰りや1泊旅行に適した場所で、フランスの歴史と美しい景観を満喫できるエリアです。

レオナルド:オススメ本

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Photo and Writing by Hasegawa, Koichi

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