ダブリンを歩く|U2の音楽が響く街とリフィー川の夜

U2初期アルバム制作スタジオ周辺にあるプレート

テンプルバーの夜へ

ダブリンの夜を歩くなら、やはりテンプルバー周辺へ向かいたくなる。

石畳の通り、赤い外観のパブ、通りにあふれる人の声、店内から聞こえてくる音楽。
夜になると、このエリアは一気に賑わいを増す。

テンプルバーエリア
夜のテンプルバーエリア。Photo by HASEGAWA, Koichi

アイルランドの旅で、パブに入る時間は特別である。
ギネスを頼み、店内のざわめきに身を置く。
誰かが笑い、誰かが話し、どこかで音楽が鳴っている。

ダブリンのパブは、観光名所であると同時に、街の生活の一部でもある。
少し混みすぎている場所もある。
それでも、夜のテンプルバーには、この街ならではの熱がある。

U2の音楽は、巨大なスタジアムで鳴り響くロックである一方、こうしたダブリンの夜のざわめきともつながっているように感じる。
街角、川、パブ、人の声。
その中から、彼らの音楽は遠くへ伸びていった。

文学の街、音楽の街

ダブリンは、音楽だけの街ではない。
文学の街でもある。

ジェイムズ・ジョイスをはじめ、アイルランド文学の記憶が街の中に残っている。
ジョイスの『ユリシーズ』を思い浮かべると、ダブリンという街そのものが、巨大な文学空間のようにも感じられる。

一方で、U2の存在は、20世紀後半以降のダブリンを世界へ結びつけた。
文学が街を言葉で記録したとすれば、U2は街の感情を音として遠くへ届けたのかもしれない。

旅の中で面白いのは、そうした文化が別々に存在しているのではなく、ひとつの街の中で重なっていることだ。

リフィー川を歩く。
橋を渡る。
パブへ入る。
ホテルのバーで一杯飲む。
U2の音楽を思い出す。
ジョイスの名を思い出す。

そのすべてが、ダブリンという街の中で自然につながっていく。

U2を聴きながら歩きたい街

ダブリンを歩くなら、U2を聴きながら歩きたくなる。

もちろん、街そのものの音を聴くのもいい。
川の音、車の音、パブから漏れる声、石畳を歩く足音。
けれども、少しだけU2の曲を流してみると、風景の見え方が変わる瞬間がある。

音楽には、場所を記憶に変える力がある。
そのとき見た橋や通りや空が、曲と一緒に心に残る。
後でその曲を聴くと、ダブリンの夜が戻ってくる。

僕にとって、U2とダブリンはそのように結びついている。

U2の音楽は、世界中で聴かれている。
しかし、その始まりはダブリンにあった。
この街を歩くことで、巨大な音楽の原点に少しだけ近づける気がする。

ダブリンの夜が残したもの

ダブリンの旅で心に残っているのは、派手な観光名所よりも、夜の街の空気だった。

リフィー川の水面。
ハーフペニーブリッジの白いアーチ。
クラレンス・ホテルの重い扉。
テンプルバーの灯り。
ギネスの黒。
そして、頭の中で流れていたU2の音楽。

それらがひとつにつながって、ダブリンの記憶になっている。

旅先で音楽が風景と重なる瞬間がある。
その瞬間、場所はただの観光地ではなくなる。
自分だけの記憶として、深く残る。

ダブリンは、まさにそういう街だった。

U2が好きなら、この街を歩くことはきっと特別な体験になる。
けれども、U2をよく知らなくても、ダブリンの夜には十分な魅力がある。
川があり、橋があり、パブがあり、文学と音楽があり、人の声がある。

そのすべてが、少し湿ったアイルランドの空気の中で響き合っている。

ダブリンを歩いた夜のことを、僕は今もよく思い出す。
そしてその記憶の奥では、いつもU2のギターが静かに鳴っている。

筆者について

長谷川浩一|美術史家・講師・執筆

旅先で出会った街角の光、夜の気配、建築や風景に残る時間の層を、
写真と言葉で記録しています。
東京では西洋美術史講座 Edogawa Art Salon, Tokyo を開き、
noteでも美術や旅にまつる文章を書いています。

シェアよろしくお願いします!

2件のコメント

アイルランドに行ったことがないから是非行ってみたいです。クラレンス・ホテルに泊まってみたい!バーに行って、ボノがいたらびっくりしますね。今夜はU2の曲を聴きながら夕食をつくろうかな~

アイルランドいいですよ!U2聴きながらぜひ今度旅してみてください〜‼️

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です