ぶらぶらとヴァンドーム広場を目指す
ルーブルを離れ、1区の方へ歩いていく。
サン・ロック教会の脇道に入ると、石畳はいっそう美しく見えた。
街灯に照らされた道は、まるで中世のどこかへ続いているようで、時間の感覚が少し曖昧になる。

サントノーレ通りをぶらぶら歩いていくと、やがてヴァンドーム広場が静かに現れる。
ここもまた、夜がよく似合う場所だ。
昼間の華やかさとは違って、広場全体が少し静まり、石畳に落ちる光が空間の品格をいっそう際立たせていた。
ヴァンドーム広場の一角に建つリッツを目にすると、どうしてもヘミングウェイやフィッツジェラルドのことを思い出す。
彼らが愛したパリ、彼らが書いたパリ、その記憶がこの広場の夜にはどこか似合う。
ヘミングウェイの『移動祝祭日』を読むたび、パリは単なる都市ではなく、文学が生きる場所でもあるのだと感じる。

フィッツジェラルドの短編『バビロン再訪』にも、リッツの記憶が重なる。
パリの夜が人を惹きつけるのは、美しいからだけではない。
そこに文学や映画や、過去の誰かの記憶が静かに残っているからだろう。
あなたのミッドナイト・パリを
新年のカウントダウンを友人たちと過ごした帰り道、夜もかなり更けたころ、ふとエッフェル塔の方を見ると、いつもの煌びやかな光はすでに消えていた。
闇の中にぼんやりと浮かぶその姿は、むしろ灯りに包まれているときより深い印象を残した。
光を落としたエッフェル塔は、まるで街と一緒に静かに眠りにつこうとしているようだった。
パリの夜は、ただ華やかなだけではない。
こうして灯りが落ちていく時間にこそ、この街の本当の魅力が見えてくる気がする。
昼のパリが美しいのはもちろんだ。
けれど、街が寝静まっていくころのパリには、それとは別の深さがある。
建物も広場も橋も、夜の静けさの中でようやく本来の呼吸を始める。
その一瞬一瞬が、誰かにとっての「ミッドナイト・パリ」になるのだと思う。
Photo and Writing by Hasegawa, Koichi








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