「夜の散歩シリーズ」:クリスマスの魔法に包まれたミュンヘンの夜

ミュンヘンの夜を歩く

夜の散歩シリーズ:星空の下で巡るミュンヘンの冬物語

ミュンヘン。ドイツ第3の都市といえど、その街並みはどこか落ち着きと優雅さに満ちていて、まるで時間がゆっくりと流れているかのよう。

ゲーテやモーツァルトが魅了され、「ここに住みたい」と言ったという逸話は、現代にも通じる。訪れる者を温かく迎え入れるこの街は、洗練されながらも日々の生活を大切にする人々の息吹が感じられる場所。旅人の心にさえ、その豊かなライフスタイルが自然と染み渡るのだ。

夜のミュンヘンを歩く

ミュンヘンには見どころが数えきれないほどある。ヨーロッパ屈指の美術館を訪れたり、芳醇なドイツビールを片手に伝統料理に舌鼓を打ったり、バイエルン・ミュンヘンの試合を観にアリアンツ・アレーナへと足を運んだり。ミュンヘンを拠点に、ノイシュバンシュタイン城への小旅行も心躍る。

ミュンヘンから行くノイシュバンシュタイン城への旅もオススメ。

でも今回は、そんな日中の喧騒から少し離れて、夜のミュンヘンを散策してみたいと思う。特にクリスマスの夜、ミュンヘンの街は、まるで夢の中にいるかのような魔法に包まれる。キラキラと輝くイルミネーションに彩られた古い街並みは、心を温めるような静けさとロマンに満ち溢れている。冬の寒さが頬を撫でる中、夜空を見上げると、遠くから響く教会の鐘の音が街のあちこちに優しく溶け込んでいく。

歩いていると、広場に立つクリスマスマーケットの明かりが輝き、グリューワインの香りがふわりと鼻をくすぐる。人々の楽しげな笑い声がどこかしらから聞こえ、ホリデーシーズンならではの心温まる光景が広がっている。街全体が一つの物語を紡ぐような夜――それが、ミュンヘンの冬の魔法だ。

ミュンヘンへの旅:オススメの行きかた

ミュンヘンへのアクセス方法

ミュンヘンへは、主に飛行機、電車でアクセスできます。

  1. 飛行機で行く場合
    ミュンヘンには**ミュンヘン国際空港(フランツ・ヨーゼフ・シュトラウス空港)**があり、国際線も多く運航されています。空港から市内中心部へは、Sバーン(S8またはS1線)が便利です。約40分で中央駅(ミュンヘン・ハウプトバーンホフ)に到着します。また、タクシーやバスも利用可能です。空港から市内までの距離は約30kmです。
  2. 電車で行く場合
    ドイツ国内やヨーロッパの主要都市からミュンヘンへは、ドイツ鉄道(DB)の高速列車ICEが運行されています。特にベルリンやフランクフルトからのアクセスが便利で、フランクフルトからは約3時間、ベルリンからは約4~5時間でミュンヘンに到着します。中央駅は市内の主要な観光地にもアクセスしやすいロケーションにあります。

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さあ、クリスマス時期のミュンヘンへの旅をはじめよう。

フランクフルトからICEでミュンヘンへ。ドイツの鉄道旅もオススメ。

文化の街:ミュンヘン、クリスマスの夢を歩く

ある年のクリスマス、僕はひとり、ドイツのミュンヘンにいた。日本からイギリスへ戻る途中、ふと立ち寄ったこの街は、冬の冷たい空気の中にも、温かさを秘めた特別な時間が流れていた。フランクフルト経由でミュンヘンへ降り立った僕は、どこか異国の地に迷い込んだような感覚に包まれた。

街を行き交う家族連れや恋人たちが楽しそうに笑い合う姿を目にすると、ほんの少しの寂しさが胸をよぎる。でも、その感情はすぐに、僕がこの街で果たすべき「出会い」への期待に変わる。アルテ・ピナコテークにあるアルブレヒト・デューラーの傑作を目にすること――それがこの旅の目的だった。

美術館を後にすると、外には夕暮れのミュンヘンが広がっていた。街の灯りが静かに灯り始め、少しずつクリスマスの魔法がこの街を包み込む。夜が訪れると、街は一層輝きを増し、まるで絵本の中に迷い込んだかのような光景が広がっていた。

クリスマスの夜。人々は買い物を済ませて家路につく。

クリスマスマーケットの屋台からは温かいグリューワインの香りが漂い、人々の笑顔が輝く。夜のミュンヘンを歩きながら、その穏やかでありながらも鮮やかな祝祭の光景に包まれると、心が次第に温かく満たされていく。クリスマスの夜をひとり歩く旅人の心にも、この街の優しさと美しさが静かに染み渡っていくのだった。

アルテ・ピナコテーク。傑作が揃う。

アルテ・ピナコテークは世界最古の公共美術館のひとつで、その威厳と洗練が漂う館内は、アートへの深い愛が時代を超えて息づいている場所だ。

向かいにはノイエ・ピナコテークがあり、マネやモネといった印象派の傑作が収められている。しかし、僕の心を惹きつけてやまないのは、アルテの方に展示されたルネサンスからバロックにかけてのクラシック絵画たち。クラナッハやアルトドルファーの傑作も魅力的だが、何と言ってもデューラーだ。ドイツが生んだ巨匠、アルブレヒト・デューラーの作品が放つ力は、言葉に尽くせない美と重厚さがある。

美術館を後にすると、外には夕暮れのミュンヘンが広がっていた。街の灯りが静かに灯り始め、少しずつクリスマスの魔法がこの街を包み込む。夜が訪れると、街は一層輝きを増し、まるで絵本の中に迷い込んだかのような光景が広がっていた。

クリスマスマーケットの屋台からは温かいグリューワインの香りが漂い、人々の笑顔が輝く。夜のミュンヘンを歩きながら、その穏やかでありながらも鮮やかな祝祭の光景に包まれると、心が次第に温かく満たされていく。クリスマスの夜をひとり歩く旅人の心にも、この街の優しさと美しさが静かに染み渡っていくのだった。

クリスマスのミュンヘンの街、光の夢路

冬のドイツは、他の季節とは一線を画す特別な魅力を放つ。特にクリスマスの時期は、街全体がまるで夢の世界に変わり、どこを歩いても心が華やぐ瞬間が訪れる。

クリスマスマーケットの賑わいに包まれながら、夜の冷たい空気の中をそぞろ歩くのは、この上なく心地よいひととき。だからこそ、訪れるならクリスマスシーズンを強くおすすめしたい。厚手のコートに身を包み、クリスマスの夜を歩いてみよう。

光あふれるマリエン広場

まず足を向けるのは、ミュンヘンの心臓とも言えるマリエン広場(マリエンプラッツ)

ゴシック建築が壮麗な市庁舎を背景に、広場は歴史の重みを感じさせながらも、クリスマスマーケットの温かな光に包まれている。この広場は12世紀から続く由緒ある場所で、毎年クリスマスの3週間、色とりどりの屋台が立ち並び、広場は笑顔と歓声で満ち溢れる。

ドイツ各地で開催されるクリスマスマーケットは、中世の伝統を今に伝えるもの。ニュルンベルクやフランクフルトにその起源を持つと言われ、ミュンヘンでもその魅力が存分に感じられる。グリューワインと呼ばれるホットワインにスパイスを加えた温かな飲み物を片手に、香ばしいソーセージやとろけるような煮込み料理を楽しむのは、寒い夜にふさわしい至福の瞬間だ。

マリエンプラッツ自体も、ただの広場ではない。その名の通り、ここには聖母マリアの像が立ち、この像には深い歴史が宿っている。もともとフラウエン大聖堂にあったこのマリア像は、三十年戦争中にスウェーデン軍からの解放を記念して1638年にここに移設されたもの。アルプス以北では初のマリア像であり、その存在は周囲の地域にも強い影響を与えた。

バイエルン地方は宗教改革の波が激しく押し寄せた16世紀にも、カトリックの伝統を比較的色濃く残してきた。マリエンプラッツに佇むマリア像は、その信仰と歴史を象徴しているかのように、広場の中心で静かに輝き続ける。

クリスマスのミュンヘンは、ただ華やかなだけではない。その背後には、何世紀にもわたる歴史と信仰が織り交ざり、夜空に輝く星々とともに語りかけてくる。歴史と伝統、そして人々の温かさがひとつになったこの街のクリスマスは、まさに心に響く特別な時間だ。

広場にはクリスマスツリーが。

マリエンプラッツからカールス広場へ、光の道を辿る

マリエンプラッツの輝きに包まれた後、その足をカールス広場(カールスプラッツ)へと向けてみよう。広場から広場へと続く道は、まるでクリスマスの光の道筋を辿っているかのようだ。冬の澄んだ空気の中に、温かなランタンやイルミネーションが散りばめられ、夜の散歩はまるで別世界に足を踏み入れるような感覚を呼び起こす。

クリスマスシーズンには、このカールス広場周辺にも様々な店が並び始める。賑やかに設営された屋台や露店は、ホリデーシーズンの喜びを余すところなく表現し、どこを歩いても心がときめく。小さな光に照らされた装飾品や工芸品が所狭しと並び、手作りのクリスマスオーナメントを眺めると、いつしか子供の頃の思い出が蘇ってくる。

ここでは、グリューワインや焼きたてのパン、香ばしいスパイスの効いたクッキーが旅人の心も体も温めてくれる。道すがら、ふと足を止めてみると、周りの建物や古い石畳が歴史を静かに物語っているのが感じられる。時代を超えて受け継がれてきたこの街の美しさと、クリスマスの魔法が織りなす光景に、ただ身を任せたくなるひとときだ。

カールス広場までの道のりは、ミュンヘンのクリスマスの魅力をじっくりと味わいながら歩む、心温まる旅路。街全体が祝祭の光に包まれ、静けさと活気が美しく調和するこの季節こそ、ミュンヘンがもっとも輝く瞬間だ。

カールスプラッツ、冬の魔法に包まれて

カールスプラッツは、マリエンプラッツとミュンヘン中央駅のほぼ中間に位置する広場。その存在は、まるでふたつの大切な場所を繋ぐ静かな中継点のようだ。広場のシンボルは、歴史を感じさせる堂々とした城門と、四季を彩る美しい噴水。その風景は、昼と夜、季節ごとに異なる表情を見せ、訪れる者を飽きさせない。

カールスプラッツ周辺

しかし、カールスプラッツが本当の魅力を放つのは、冬のクリスマスシーズンだ。冷たい空気の中で、広場は一変してスケートリンクへと姿を変える。夜の帳が下り、クリスマスの灯りに包まれたリンクの周りは、まるで魔法にかけられたかのようにきらめく。子供たちの笑顔やカップルたちの楽しげな様子がリンクを彩り、笑い声と滑る音が、冬の静寂の中に心地よく響き渡る。

城門と噴水が凍てつく冬の空気の中でも、スケートリンクの温かい光景が広場全体を包み込み、まるでミュンヘンの心臓がここで脈打っているかのようだ。厚いコートに身を包んだ人々がリンクを軽やかに滑りながら、ミュンヘンの冬を存分に楽しむ姿を眺めていると、この街の真の魅力が静かに伝わってくる。

冬の冷たささえも、クリスマスの魔法の一部に感じられる特別な場所――それがカールスプラッツだ。

バイエルン国立歌劇場、オペラの歴史が響く場所

ミュンヘンの中心にそびえ立つバイエルン国立歌劇場は、ドイツ有数の歌劇場として名高く、その歴史と伝統は、訪れる者を圧倒する。外観は荘厳でありながら、内部に一歩足を踏み入れると、音楽と芸術の精霊が息づくかのような空気に包まれる。

マックスヨーゼフ広場

この歌劇場は、ただ美しいだけではない。音楽史に名を刻んだ数々の瞬間が、この場所で繰り広げられてきた。特に、リヒャルト・ワーグナーの名作オペラが初演された場所として、音楽ファンにとって特別な意味を持つ。『ワルキューレ』や『ラインの黄金』――それらの壮大な物語と音楽が、この劇場の舞台で初めて命を吹き込まれ、観客の心を揺さぶった。

ミュンヘンの冬の夜、バイエルン国立歌劇場の前を通り過ぎると、その優雅な姿がライトアップされ、まるで歴史の中から浮かび上がってくるように感じられる。中世の騎士たちや神々の物語が織り成すワーグナーの音楽が、まだ建物の壁に染みついているかのようで、目を閉じると劇場内で響き渡るアリアが静かに耳に届いてくるようだ。

劇場の扉を開ければ、そこは時空を超えた音楽の神殿。観客席に腰を下ろし、幕が上がる瞬間を待つ間、舞台に映し出される過去の偉大な作品たちの影を感じることができる。ミュンヘンを訪れたなら、この劇場の中で一夜を過ごし、音楽と共に心を旅させるのもまた、この街の忘れられない魅力のひとつだ。

バイエルン国立歌劇場

バイエルンの郷土料理を食べよう

1人旅では、夕食は1人で入りやすい店を選びがちだが、さすがにミュンヘン名物を食べようと目当ての店を探し歩いていると、美味しそうなレストランが視界に入った。あったぞ!「ハクスンバウアー」。ミュンヘンで有名な店だ。

ミュンヘンに行ったら立ち寄りたいハクスンバウアー

豚肉のグリルがクルクルと回っているのが外からも見える。有名なバイエルンの郷土料理を食べようとクリスマスで賑わう店内へ。運良く一人で座れるテーブルに案内されたが、なかなか1人で座るには居心地が悪かった。しかし、肉とビールには大満足。

※↑写真の撮り方レッスンブック:夜景の撮り方だと、ISOなどの用語を覚えてカメラをいじってみると、上手く撮れるようになります。とてもわかりやすい一冊なので、あると便利です。

オルゴールの音色が響く街角、クリスマスの魔法

クリスマスの夜、夕食を終えて冷たい冬の風に身を包みながら、ミュンヘンの街を少し歩いていた時、ふと雑踏の中に静かな空間が生まれていることに気がついた。

煌びやかなイルミネーションや人々の足音が響く中、その空間だけが、まるで時間が止まったかのような不思議な雰囲気に包まれていた。

ミュンヘンで見かけたオルゴール屋さん

そこにあったのは、小さなオルゴール屋さん。

木製の手回しオルゴールが、クリスマスの夜に優しい音色を奏でていた。街を行き交う子供たちが、その音色に引き寄せられるように集まり、小さな男の子がオルゴールの前で夢中になって聴き入っている。彼の表情は純粋そのもので、まるでオルゴールの魔法にかけられたようだった。

その男の子の隣に、小さな女の子が恐る恐る近づく。オルゴールの音色に導かれるように、彼女もその魔法の世界に足を踏み入れる。オルゴール屋さんと目が合い、二人の間に静かに交わされる「目と目の会話」。言葉はいらない、ただ音楽と心で通じ合う瞬間が、そこにはあった。

その光景を見つめながら、私はその場に漂う温かさに心を奪われた。クリスマスの冷たい夜風の中で、この小さな音楽の空間は、まるで特別なぬくもりを届けるかのようだった。街の喧騒から一歩離れ、オルゴールの音色が紡ぐ物語が広がるこの瞬間――それはまさにクリスマスの魔法が作り出した、ひとときの夢だった。

Photo and Writing by Hasegawa, Koichi

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