はじめに
今回はギリシャ・エーゲ海の魅力とともに村上春樹の『遠い太鼓』を取り上げます。
『遠い太鼓』は、村上春樹がヨーロッパ滞在中に綴ったエッセイで、彼ならではの視点から描かれる人々や文化の豊かさが読者を惹きつけます。彼と妻の会話や日常のエピソードは、ユーモアと親しみやすさに溢れ、時折「うちにも似たようなことがあるな」と思わず笑ってしまう場面も。
エーゲ海には3000もの島々が点在し、その中には古代ギリシャの遺跡や、夏になると観光客で賑わうリゾート地が広がっています。太陽と海に包まれた風景は訪れる人々を癒し、心を穏やかにしてくれるでしょう。青と白が織りなす美しい風景の中で過ごす時間は、まさにリフレッシュのひとときとなるはずです。
ギリシャ
村上春樹の『遠い太鼓』に出てくる「死に犬現象」を見る
村上夫妻が訪れたギリシャの島々には、スペッツェス島、ミコノス島、クレタ島、レスボス島などがあり、それぞれに異なる魅力が広がっています。
ミコノス島は、白い建物と青い海が織りなす美しい風景で知られ、日本でも人気のハネムーンスポット。多くの新婚夫婦が憧れるリゾート地です。そして、クレタ島はミノア文明の遺跡、特にクノッソス宮殿で名高い、歴史愛好家にはたまらない場所です。
一方で、レスボス島はギリシャで最も晴天率が高く、その明るい空とエーゲ海のコントラストに心奪われる人も多いでしょう。村上春樹の描写を通じて、この島の美術館や静かな風景に魅了され、僕もいつか訪れたいと強く感じました。
スペッツェス島は、他の有名なエギナ島やイドラ島に比べると日本ではあまり知られていませんが、村上さんの滞在記を読むと、まるでギリシャの日常の息遣いが感じられるような臨場感があります。特に彼が描写する「死に犬現象」はユニークです。炎天下の午後、島の通りでぐったりと横たわる犬たちを見て、ギリシャ人たちは「この犬は生きているのか、死んでいるのか?」と真剣に議論を交わすという場面が興味深く、村上さんらしい視点でギリシャの風景を捉えています。
この不思議な光景を、私もいつか自分の目で確かめたいと思わせるほど、村上春樹の文章はギリシャの島々への旅心を掻き立ててくれます。
アテネから行くエーゲ海クルーズ
アテネから気軽に日帰りで訪れることができるイドラ島。ピレウス港からエーゲ海クルーズに乗り、島々を巡る旅は、まさに『遠い太鼓』の一節を追体験するかのようです。
さーて、動物たちを見てみよう!
ギリシャの温暖な島々では、時間さえもゆっくりと流れ、そこに住む人々や動物たちも、のんびりとしたリズムに包まれています。イドラ島では、車が禁止されており、馬やロバが主要な交通手段。まるで時間が止まったかのような島の生活風景は、村上春樹が描いたギリシャののどかな世界そのものです。
エーゲ海の青い海原を進み、動物たちの穏やかな姿を眺めながら、春樹の言葉に浸る。そんなクルーズの旅は、心を解き放ち、日常の喧騒から解放してくれることでしょう。
アテネ発のエーゲ海クルーズで訪れる静寂のイドラ島
アテネからエーゲ海クルーズで辿り着くイドラ島。そこには、まるで時間がゆっくりと溶け込むかのような、穏やかで魅力的な風景が広がっています。
島を歩くと、街のあちこちで犬や猫たちがのんびりと昼寝を楽しんでいます。彼らは太陽の光を浴びながら、まるでこの瞬間を永遠に楽しんでいるかのように、無防備に横たわっています。この穏やかな光景を目にした村上春樹も、思わず微笑んだことでしょう。
彼らは、こちらが近づいてもまるで動じることなく、そのまま静かに夢の中。どんな物音がしても、日本の犬のように飛び起きたりはしません。ただ、その場所で静かに存在し、心地よい時間を楽しんでいるように見えるのです。
港の野外レストランで、犬と猫が見守る穏やかな時間
イドラ島の港近くの野外レストランでは、犬や猫が至るところで昼寝を楽しんでいます。彼らは、人懐こいのか、それともただマイペースなのか、近くを通り過ぎても全く気にする様子はありません。テーブルの傍らで眠りこける彼らは、まるでこの島のリズムに溶け込んだかのように、のんびりとした時間を過ごしています。
動物たちが彩る、リラックスムード漂うイドラ島
イドラ島にいる犬や猫たちの存在が、島全体をさらにリラックスさせているように感じます。透き通る青い海や可愛らしい白壁の街並みに加えて、無邪気に昼寝を楽しむ動物たちが、この島の穏やかな雰囲気を一層印象深くしています。彼らの姿を見るたび、イドラ島の魅力がより一層心に残るものとなるでしょう。
太陽とエーゲ海に惹かれて きらめきの国ギリシャへ (旅のヒントBOOK):写真と文章がとてもステキな一冊。なかなかギリシャまで行けないですが、読んでいるだけで旅行気分の一冊です。
村上春樹のオススメ紀行エッセイ
村上春樹の作品の中には、彼自身の旅の体験を綴った魅力的な紀行文が数多く存在します。彼の文章は、旅先でのちょっとした出来事や風景、現地の人々との交流を独自の視点で描き出し、読者をその場所へと誘います。今回は、その中でも特におすすめの紀行文をいくつかご紹介します。
- 『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』
僕はウイスキーが大好きで、よく愛飲していますが、村上春樹のこの紀行文はウイスキーファンにとってたまらない内容です。スコットランドには数多くのウイスキー蒸留所が点在しており、特にアイラ地方にはぜひとも訪れてみたいと思っています。
本の中で、スコットランドのパブに入った際の現地の人々のウイスキーの飲み方に関するエピソードは非常に参考になりました。村上さんの視点から描かれたその光景は、ウイスキーを楽しむ際の新たな視点を与えてくれます。
また、この本には美しい写真が多数収められており、僕の妻もその写真を切り取って壁に貼っています。ページをめくるたびに、目で楽しむこともできるのがこの紀行文の魅力です。
- 『辺境・近境』
この本を手にすると、とにかく旅に出たくなります。村上春樹の旅エッセイはどれも素晴らしいですが、この一冊も特に印象的です。モンゴルの壮大な風景や香川の魅力的な文化など、村上さんの視点を通じて訪れた土地の魅力を存分に感じられます。
旅好きにはぜひ読んでもらいたい一冊で、実はこれが僕が最初に読んだ村上春樹の紀行文なんです。彼の文章に触れるたびに、心が旅に誘われていきます。
写真編です。これも興味深い。
- 『雨天炎天』
ギリシャにまつわるエピソードは『遠い太鼓』にも数多く登場しますが、この本では特にアトスが取り上げられています。ここはなかなか訪れることができない特別な場所であり、村上春樹が描くその魅力にはとても興味をそそられます。
それにしても、村上さんの旅エッセイは本当に最高です。彼の文章を読むだけで、まるで自分が旅をしているかのような気分になります。多くのファンが彼のエッセイを愛し、小説よりもこちらの作品を好むという声もよく耳にします。この一冊も、ぜひ手に取って読んでみてほしいです。
- 『ラオスにいったい何かあると言うんですか』
現時点で彼の紀行文集の中では最新の作品と言えるでしょう。旅好きや村上春樹ファンにはぜひ読んでいただきたい一冊です。特にラオスに関する記述は興味深く、他の土地のエピソードも同様に魅力的です。ギリシャの美しい風景や文化についての描写も印象に残ります。
この紀行文集を手にすることで、様々な場所への旅の気分を味わえること間違いなしです。
「ギリシャのススメ」 〜意外な魅力、ギリシャワイン〜
日本ではあまり馴染みのないギリシャワインですが、実はヨーロッパでは深い歴史を持ち、ここ数年で人気が急上昇しています。フランス、スペイン、イタリア、ドイツといったワインの名産国に比べるとまだ知名度は控えめですが、ギリシャワインには独自の魅力がたくさん詰まっています。
フルーティーで爽やかな白ワインから、しっかりとしたボディの赤ワインまで、ギリシャ特有のブドウ品種を楽しむのは、ワイン通にもおすすめです。ギリシャの豊かな風土が生み出すこのワインの世界を極めてみるのも、きっと楽しい発見になることでしょう。
ギリシャ クレタ産のワイン 赤ワイン 辛口 750ml (柔らかく丸みのあるフルーティーな風味)ワイン エノトリア レッド [ドロファキスワイナリー]:賞を取ったことがあるワイン。クレタ島はギリシャワインの産地の一つで、いいワインが取れます。オススメです。
Photo and Writing by Hasegawa, Koichi and Shino
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