ゴッホの人生を追う
1. 画家になるまで
- 絵を始めたのは27歳
- 不器用で人間関係に悩み、すべての職業で挫折。
- 恋愛も失敗続き。
2. オランダ時代(1880年~1885年頃)と“農民の画家”としての出発
◆ 画風とテーマ
暗い色調を基調とした作品
農民や労働者の暮らしを主題に
宗教的・道徳的な使命感を持って制作
→ 牧師志望だった過去が影響
⭐️『ジャガイモを食べる人々』(1885年4月–5月)油彩、キャンバス、82 × 114 cm(所蔵:ゴッホ美術館)
– ニューネンでの農民の暮らしを丹念に観察し、習作も多数制作。
– 粗末な食卓を囲む農民家族を描き、労働と人間性への敬意を込めた作品
– 「労働の手で掘ったじゃがいもを、その手で食べる」ことにリアリティを求めた
3. パリ時代(1886–1888)
◆ 新たな出会いと刺激
- 1886年、弟テオを頼ってパリへ
- サロンや画商との交流、前衛的な芸術家たちとの接触→テオが画商だったことの重大さ。
→ 印象派(モネ、ルノワールなど)や新印象派(スーラ、シニャック)に触れ、その技法を学ぶ
◆ 色彩と技法の変化
- 暗い色調から脱却し、明るく鮮やかな色彩へ
- 小さなタッチや点描の技法を吸収
◆ 影響を受けた芸術
アドルフ・モンティセリ:色彩の豊かさと即興的な筆致
『花瓶の花』1875年頃。油彩、51 × 39cm。(ゴッホ美術館)
日本美術(浮世絵):大胆な構図、平面的表現、鮮やかな色彩
→ ゴッホは浮世絵を熱心に収集・模写し、自作に取り入れる
⭐️『ジャポネズリー:梅の開花(広重を模して)』1887年10月–11月、油彩/キャンバス、55.6 × 46.8 cm(ゴッホ美術館)→ 歌川広重の作品を模写。背景には日本文化への憧れがにじむ。
⭐️『タンギー爺さん』1887年秋、油彩/キャンバス、92 × 75 cm(ロダン美術館)→ パリの画材屋タンギーを描いた肖像画。背景に浮世絵を配し、東西文化の融合を表現
4. アルル時代(1888–1889)
- 1888年2月、日本の太陽と色彩を求めて南フランスへ
- 理想の芸術家共同体を夢見て「黄色い家」を借り、アトリエを構える
◆ ゴーギャンとの共同生活
- 同年10月、ポール・ゴーギャンがアルルへ到着する。一時的に共同生活を送るが、性格の違いや芸術観の対立から関係悪化。
- 12月、ゴーギャンが家を出る。
→ ゴッホは精神的に不安定となり、自らの耳を切り落とす事件に発展してしまう。
⭐️『ひまわり』1888年8月、油彩/キャンバス、92.1 × 73 cm(ナショナル・ギャラリー・ロンドン )→ ゴーギャンを迎えるために描いたとされる。友情と希望の象徴。宗教的な意味。
『黄色い家』1888年9月、油彩/キャンバス、72 × 91.5 cm(ゴッホ美術館)→ 芸術家たちの共同生活を夢見た“アトリエ兼住居”
⭐️『夜のカフェテラス』1888年9月、油彩/キャンバス、80.7 × 65.3 cm(クレラー=ミュラー美術館)→ 夜の風景を明るい色彩で描いた画期的作品。光と闇の対比が印象的。
『アルルの跳ね橋(ラングロワ橋)』1888年、油彩/キャンバス → 日本的な構図への関心もうかがえる。
5. サン=レミ時代(1889–1890)
◆ 精神療養のための入院
- 1889年5月、耳切り事件の後、自ら進んでサン=レミ・ド・プロヴァンスの精神療養院に入所する。自然に囲まれた静かな環境の中で制作を継続する。
- 発作と回復を繰り返す中、創作を続ける。院長の記録には「発作が起きていないとき、患者はとても落ち着いていて意識もはっきりしており、熱心に絵を描くことに集中していた。」
◆ 表現の深化
- 動きのある筆致と大胆な色彩表現
- 風景や植物、人物像に幻想的・象徴的な要素が強まる
- 精神の苦悩と、自然の美しさや生命力とが共存する作品群
⭐️『星月夜(The Starry Night)』1889年6月、油彩/キャンバス、73.7 × 92.1 cm(MoMAニューヨーク)→ 窓から見える夜空を幻想的に描いた傑作。
『糸杉』1889年6月以降の連作→ 強い筆致と激しい動きが印象的。
6. オーヴェル=シュル=オワーズ時代(1890年)
- 1890年5月、パリ郊外の村・オーヴェル=シュル=オワーズへ移る
- 弟テオの紹介で、精神科医ポール・ガシェの近くで療養生活を開始
- 自然豊かな田園風景の中で、わずか2ヶ月で70点以上の絵画を制作
⭐️『カラスのいる麦畑』1890年7月、油彩/キャンバス、50.5 × 103 cm(ゴッホ美術館)→ 最期の作品の一つ。
『医師ガシェの肖像』1890年6月、油彩/キャンバス、67 × 56 cm(オルセー美術館)→ 精神を見つめる医師像。
『教会のある風景(オーヴェルの教会)』1890年6月、油彩/キャンバス、94 × 74 cm(オルセー美術館)
◆ ゴッホの死
1890年7月27日、銃で自殺を図り(多説あり)、2日後に死去(享年37歳)
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