はじめに
今回はイタリア紀行。画家ジョルジョ・モランディとイタリア北部の街ボローニャを紹介します。
ボローニャ
モランディの魅力を語る
僕はモランディが好きで、だいぶ前から知っていたんですが、はじめて本物を見たのは東京八王子にある東京富士美術館でした。その後ヨーロッパへ渡り、向こうでも沢山見ましたが、印象的だったのは、ヴァチカン美術館。ここは、ミケランジェロやラファエロの傑作で知られ、ラオコーンなどの古典彫刻など、イメージとしてはクラシックからルネサンス、バロックという感じでしたが、展示室にいきなりモランディの作品が現れたのが、とても印象に残っています。
『甘い生活』での登場シーン
ヴァチカンも認めたモランディ。その彼が一般に有名になったのは、映画『甘い生活』(原題 La dolce vita)(1960)でモランディの作品が紹介されたシーンからと言われています。
『甘い生活』は、イタリア映画界の巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の作品として知られますね。
モランディの魅力とは
ジョルジョ・モランディ(1890-1964)は、20世紀イタリアを代表する画家のひとり。瓶や壺をモチーフにした静物画を描いた作品で有名です。
彼の画風は派手ではないし、対象も地味。でも、妙に印象に残る作品を描きます。じぃーっと見ていると、段々に味が出てくる感じ。
僕はこのように色々な意味で「飽きない」アーティストは、何世紀にもわたって好まれるに値する巨匠だと思う。彼は、生涯ボローニャで暮らしながら、これらの静物画の制作に没頭したアーティストでした。
- Morandi Museum*英語とイタリア語のページになります。
繰り返し描かれる静物
モランディの描いたものは同じような物ばかりとよく言われますが、彼は静物画を生涯に渡って追求しました。描いている対象は、瓶、器や壺みたいなものやカップといったものばかり。
でも、その質感や静物が置かれているテーブルの平行線であったりが、凄く計算というか、考えているというか、全部違った風に見えてくるのが、不思議です。
モランディの描く花の美しさ
ボローニャで初めてモランディの描く花の作品を見たんですが、物凄く綺麗でした。花と言えばルドンの作品も素晴らしいですが、モランディの花は素晴らしい。
ボローニャを歩く
モランディは、この街から生涯離れませんでした。彼の作風は前衛でもあり、古典も内包しています。そんな彼が生涯住んだボローニャはどんな街でしょう。
村上春樹の旅エッセイ『遠い太鼓』に、ボローニャのくだりがあります。曰く「ボローニャはあまり見所がないが、いい街だ」と。村上さんらしい率直な表現ですが、その飾りのない文章からも感じ取れるように、実際とても歩きやすく、いい街なんです。
(オススメの一冊):『遠い太鼓』村上春樹著。村上夫妻がイタリアやギリシャに住んだ頃のエッセイ。外国に住んでいる気分で読める傑作です。イタリア滞在ももちろん書かれています。
中世に創立されたボローニャ大学
ボローニャといえば、有名なボローニャ大学。
11〜12世紀には創立していたとされるヨーロッパ最古の中世大学のひとつで、在籍した著名人にはダンテやペトラルカ、ガリレオなどの世界史に残る巨人がいます。今でも総合大学としてイタリア屈指の規模を誇ります。
ボローニャのルネサンス
美術史的には、バロックを代表する一人アンニーバレ・カラッチ (1560-1609)などがいました。
カラッチと言えば、ローマにあるガレリア・ファルネーゼの天井画が有名です。アンニーバレとカラッチ一族は、バロック初期の美術史において重要な位置を占めるんです。
ボローニャグルメを楽しむ
ボローニャは、美食の街としても有名です。
日本でもスパゲッティ・ボロネーゼは、どんなレストランにでもありますよね。トマトペーストをベースに挽肉、香味野菜、ワイン、ブイヨンなどで作られるソース、いわゆるミートソースです。
ボローニャでは、スパゲッティよりタリアテッレというパスタであえるのが一般的。
村上春樹のエッセイ『遠い太鼓』のなかでも触れられていますが、ローマやフィレンツェの観光地よりも美味しいレストランが多いんです。何気なく入ったレストランがとても美味しい。
ポルティコ(ボルチコ)の街
ボローニャの街は、中世の佇まいを色濃く残しているとても優雅で美しい街。赤煉瓦やクリーム色がこの街の色ですね。
そしてこの街の何よりも特徴は、街中に張り巡らせたポルティコです。列柱廊とでも言おうか、今風だとアーケードですね。旧市街だけでも全長38キロにもなるんですよ。
昼は強い日光から日陰をつくる役割を持ち、また、どこに行くにも雨風をしのげてとても便利なんです。
夜は電灯やランプ、店から溢れる光がなんとも美しい幻想空間を作ります。ボローニャで美食を楽しんだ夜は、ポルティコの作り出す幻想的な光の中でゆっくりと歩きたいですね。
Photo and Writing by Hasegawa, Koichi
コメントを残す