夜の散歩シリーズ:リスボン夜散歩 路面電車で向かう丘の上の夜景カフェ

夜のリスボン

カフェ Esplanada da Graça

おすすめしたいカフェEsplanada da Graçaは、グラサ地区にある。
昼間ももちろん気持ちがいいけれど、ここはやはり夜がいい。

カフェの場所

このカフェを訪れたのは、ある年の夏、リスボンに友人たちを訪ねたときのことだった。
夜もだいぶ更けてきて、そろそろ帰ろうかと思っていたところ、「これからとっておきの場所に行こう」と誘われた。
それが、Esplanada da Graçaだった。

地元の人たちに愛されている場所らしく、テラスにはさまざまな人がいた。
若いグループ、恋人同士、夫婦、年配の人たち。
みんなが思い思いに飲み物を片手に、夏の夜のリスボンを楽しんでいる。
その光景を見ているだけで、この街の夜のやさしさが伝わってくる気がした。

カフェ Esplanada da Graça から見た夜のリスボン。

ここでは、コーヒーを飲んでもいいし、ワインやビールを片手にゆっくりしてもいい。
けれど何よりの魅力は、やはり目の前に広がる夜景だろう。
リスボンの灯りは、ぎらぎらしていない。
丘に沿って家々の窓の明かりが重なり、遠くの橋や城の輪郭が夜の中に静かに浮かんでいる。
その景色を眺めていると、この街は昼よりも夜の方が本当の表情を見せるのではないかと思えてくる。

リスボンの夜景には、どこか人の暮らしの体温がある。
大都市の夜景のような圧倒的な光ではなく、ひとつひとつの灯りが穏やかに丘に寄り添っている。
だから見ていて疲れないし、長く眺めていたくなる。

路面電車で丘を上がり、街を見下ろしながら一杯飲む。
それだけのことなのに、リスボンではその時間がひどく豊かに感じられる。
街の風、遠くから聞こえる話し声、夜景の明るさ、ゆっくり流れる時間。
そうしたものがひとつになって、夏の夜の記憶をつくっていく。

リスボンを歩くなら、こういう夜もいい。
名所を急いで巡るのではなく、丘の上で街を眺めながら、ただ少し長く時間を過ごす。
その静かな贅沢が、この街にはよく似合っている。

また別の夜にも、こんなふうにどこかの丘の上から街の灯りを眺めてみたい。

Photo and Writing by Hasegawa, Koichi

筆者について

長谷川浩一|美術史家・講師・執筆

旅先で出会った街角の光、夜の気配、建築や風景に残る時間の層を、
写真と言葉で記録しています。
東京では西洋美術史講座 Edogawa Art Salon, Tokyo を開き、
noteでも美術や旅にまつわる文章を書いています。

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