写真紀行、今回はスイス・グリンデルヴァルト編である。
スイスの山あいへ入っていくと、アルプスの山々に囲まれた美しい村がいくつも現れる。
グリンデルヴァルトも、そうした村のひとつだ。
目の前には雄大な山々が広がり、澄んだ空気の中に、草原と木の家々が静かに並んでいる。夏になると、ハイキングコースを歩く人々でにぎわい、村全体が明るい季節の空気に包まれる。
スイスの初夏は、本当に気持ちがいい。
強すぎない日差し、草の匂い、遠くに見える雪を抱いた山。歩いているだけで、身体の奥まで空気が入れ替わっていくような感覚がある。
アルプスの村、グリンデルヴァルト
グリンデルヴァルトは、スイスらしい山岳風景を味わえる村である。
周囲には、アイガーをはじめとする名峰がそびえ、村から少し歩くだけで、アルプスの大きな風景の中へ入っていくことができる。
観光地ではあるが、どこか素朴な雰囲気も残っている。
木造の家、斜面に広がる草地、牛のいる牧場、遠くに続くハイキング道。自然と人の暮らしが、無理なく同じ風景の中に収まっているように見える。
夏のグリンデルヴァルトを歩いていると、山を「見る」というより、山の中に身を置いているような気持ちになる。

アルプスの滑り台
グリンデルヴァルトでハイキングをしていたときのことだ。
山の中を歩いていると、ふいに可愛らしい木製の滑り台があった。
まわりには、アルプスの山々が広がっている。
こんな景色の中で滑ったら、どれほど気持ちがいいだろう。そう思った。大人でも、いや大人だからこそ、少し滑ってみたくなる。
ただ、そのとき僕は一人旅だった。
一人で滑り台を滑るのは、少し恥ずかしい。
周りに誰もいないか、キョロキョロと確かめた。誰もいない。よし、と思って、滑り台に登ってみる。
上から見るアルプスは、やはり美しかった。
そして、シャーッと滑る。
いや、なんて気持ちがいいんだ。
滑り終わって立ち上がった瞬間、ちょうど歩いてきたカップルと目が合った。
彼氏のほうが、にっこり笑って親指を立てた。
僕も照れながら、親指を立てて返した。
それだけの出来事なのに、なぜかよく覚えている。
次に滑るときは、彼女か奥さんと一緒がいいかな。そんなことを思った、アルプスでのひと夏の思い出である。



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