はじめに
今回は、ゴッホの作品の中でも特に人気を誇る『夜のカフェテラス』(1888)を深掘りしながら、南フランスの美しいアルルの魅力をお伝えしていきます。
夜空に浮かぶ星々とカフェの温かい光が織り成す風景は、まさにゴッホの情熱と独自の視点を映し出しています。この絵画を通じて、アルルの魅力に触れながら、その背景にあるストーリーを一緒に探求してみましょう。
アルル時代の傑作『夜のカフェテラス』
アルル(フランス)
『夜のカフェテラス』は、オランダのオッテルローに位置するクレラー・ミュラー美術館が所蔵しており、この名作を目にするためにわざわざオッテルローを訪れるアートファンも少なくありません。
ゴッホ作品の中でも特に人気が高く、彼の才能が光る一枚として、多くの人々に愛され続けています。ゴッホの中でも屈指の人気作品です。
ゴッホがアルルを目指した理由
アルルでゴッホは「ゴッホ」としての真髄を見出したと言われています。そして、日本人として特に嬉しいのは、彼のアルル行きが日本文化の影響を受けているという点です。
日本の浮世絵を愛したゴッホは、その魅力に惹かれてパリから南へと旅立ちました。しかし、「日本を求めて」とは、一体どういう意味なのでしょうか。
私たち日本人には、近代の歴史の中で日本と南フランスが結びつくことがあまり想像できません。鉄砲やキリスト教の伝来はポルトガル、貿易はオランダが中心でした。
しかし、文化面に目を向けると、ジャポニズムやパリでの浮世絵ブームが頭に浮かびます。例えば、モネが日本の太鼓橋を睡蓮の池に描いたことはよく知られています。
ゴッホの南行きは、このジャポニズムと密接に関連しています。
実は、浮世絵に影が描かれていないことから、彼は日本は非常に強い太陽の光に恵まれた地だと勘違いしていたのです。これは彼だけでなく、当時のヨーロッパ人全体の誤解でもありました。
このように、ゴッホは「日本の太陽」を求めてアルルへと向かったのです。この旅が彼のアートスタイルにどのように影響を与えたのか、そして日本文化が彼の創作にどのように息づいているのか、じっくり考えてみる価値があります。
※オススメの一冊「もっと知りたいゴッホ」
もっと知りたいゴッホ 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション):ビギナーズ・コレクション・シリーズはビジュアルも多く、ゴッホの生涯を作品と写真で追っていくので、とてもわかりやすい。著者は著名なゴッホ研究家の圀府寺 司。
浮世絵の制作技術における限界も影響し、「影を画面に描けなかった」という事実があるのは確かです。しかし、その事実をゴッホが知らなかったおかげで、アルルでは美術史に名を刻む傑作が数多く生まれました。
彼は、わずか14ヶ月の間に、なんと200点もの作品を2日に1枚という驚異的なペースで描き上げたのです。この驚くべき創作活動は、彼の独自の視点や情熱を反映したものであり、ゴッホがアルルで体験した光と色彩の美しさが、彼のアートに新たな息吹を与えたことは間違いありません。
※オススメの一本。「永遠の門」
永遠の門 ゴッホの見た未来(字幕版):人間ゴッホがよく表現されている話題の作品です。フランスの風景も綺麗ですね。とにかくデフォーの演技が凄い!
アルル時代の傑作『夜のカフェテラス』
ゴッホは上述のような理由から大きな希望と計画を持ってアルルへ移住しました。
南フランスで強烈な太陽光に出会ったゴッホは、文字通り画面に「光」と「色彩」を手にします。
アルル時代に描かれた有名な作品の一つ『夜のカフェテラス』(1888)。この作品の舞台は今もアルルのプラス・ドゥ・フォルム広場に「カフェ・ファン・ゴッホ」として営業中です。
ゴッホは、夜の風景を描いていますが、ここでもやはり「光」が眩しい。カフェから出る照明の光が強烈に光っています。夜の情景を描いたものが、こんなにも明るいとはゴッホの色彩感には驚かされますね。
この作品は、例の耳切り事件の前に描かれており、ゴッホ自身充実していた時期だったのかもしれません。アルルの色彩と彼自身の夢に夢中だった頃でした。
現在のカフェも、絵に描かれている黄色の壁面を見せており、昼間に行ってもゴッホの作品の中に入ったような体験が出来きます。ゴッホファンは絶対行ってみたい場所です。
ゴッホは母親似で筆まめでした。弟テオにこの作品について手紙で言及しています。
「夜の広場の情景と効果を描くこと、あるいは夜そのものを描くことに、すっかり僕は夢中になっています。」
※ オススメの一冊 「ゴッホの手紙」
ゴッホの手紙 中 テオドル宛 (岩波文庫 青 553-2):ゴッホは弟のテオへ沢山手紙を書いています。手紙から彼の心象も伝わってくるかのよう。
オランダで本物を鑑賞された方も、本でしか見たことがない方も、機会があればぜひアルルへ!
※オススメの一冊「ゴッホのあしあと」
ゴッホのあしあと (幻冬舎文庫):最近読んでとても楽しめた一冊です。原田さんのゴッホへの想いが込められていますね。オススメです。
Photo and Writing by Hasegawa, Koichi
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