長距離列長距離列車でエディンバラへ|秋のスコットランド、北の古都を歩く

長距離列車で、スコットランドの首都エディンバラへ

今回紹介する旅先は、スコットランドの美しき首都、エディンバラ。

旧市街と新市街が織りなす街並み、丘の上にそびえるエディンバラ城、石造りの建物、秋の木々、そしてどこか重厚で静かな空気。エディンバラには、北の都市ならではの美しさがある。

華やかな観光地でありながら、街を歩いていると、どこか落ち着いた印象が残る。人々も親切で、旅の記憶の中では、いつもよい光景と結びついている街だ。

僕にとってエディンバラは、長距離列車の車窓から始まる旅の街でもある。イングランドから北へ向かい、海を眺め、アクセントの変化を耳で感じながら、少しずつスコットランドへ近づいていく。その時間も含めて、エディンバラへの旅だった。

秋のエディンバラ旧市街
美しき北の古都、エディンバラの秋。Photo by HASEGAWA, Koichi

鉄道旅で北の都へ

ある年の秋、紅葉の時期にスコットランドのエディンバラへ向かった。

当時、僕が住んでいたのはイングランド中部の街だった。そこからエディンバラまでは、長距離列車でおよそ5時間。列車はニューカッスルを過ぎ、さらに北へ北へと進んでいく。

やがて、車窓の向こうに北海が見えてくる。海沿いを走る列車の窓から、灰色がかった空と水面が広がる。乗ってくる人々の英語のアクセントも、少しずつ変わっていく。

もうすぐスコットランドだ。

旅には、目的地に着いてから始まるものもあれば、そこへ向かう途中からすでに始まっているものもある。エディンバラへの旅は、まさに後者だった。列車の揺れ、窓の外を流れる海、だんだん変わっていく空気。そのすべてが、北の都へ向かっていることを感じさせてくれた。

列車の車窓から見える北の海
車窓から北の海が見える。Photo by HASEGAWA, Koichi

エディンバラ・ウェイヴァリー駅に着く

やがて列車は減速し、エディンバラの主要ターミナルであるエディンバラ・ウェイヴァリー駅に到着する。

ウェイヴァリー駅は、ロンドンやバーミンガムなど、イングランド各地からの長距離列車が発着する大きな駅だ。だが、駅を出た瞬間に広がる景色は、単なる大都市の駅前とは少し違っている。

駅を出て、まず目的地である美術館へ向かおうとした。そのとき、紅葉に彩られた旧市街が目の前に広がった。

石造りの重厚な建物。秋の色に染まった木々。坂のある街並み。北の都市らしい空気。その組み合わせがあまりに美しく、僕はしばらく足を止めた。

北の古都エディンバラの秋は、とても美しい。

エディンバラ・ウェイヴァリー駅
エディンバラ・ウェイヴァリー駅。Photo by HASEGAWA, Koichi

スコットランド・ナショナル・ギャラリーへ

エディンバラには見どころが多い。エディンバラ城、ロイヤル・マイル、旧市街の坂道、新市街の整った街並み。けれど、美術に関心があるなら、スコットランド・ナショナル・ギャラリーも外せない。

旧市街と新市街のあいだに位置するこの美術館は、街の風景の中に自然に溶け込んでいる。大きすぎず、しかし収蔵作品はとても充実している。

スコットランドの画家たちによる絵画コレクションはもちろん、ラファエロやレンブラントなど、西洋美術史上の重要な作品にも出会うことができる。個人的には、プッサンのコレクションにも強く印象を受けた。

エディンバラという街は、ただ美しいだけではない。石造りの都市空間の中に、文学、絵画、歴史、音楽、映画の記憶が重なっている。その層の厚さが、この街を特別なものにしている。

スコットランド・ナショナル・ギャラリーとエディンバラ旧市街
スコットランド・ナショナル・ギャラリーと旧市街。Photo by HASEGAWA, Koichi

文学と映画の記憶が残る街

エディンバラは、文学や映画とも結びつきの深い街だ。

たとえば、アーヴィン・ウェルシュの小説『トレインスポッティング』、そしてその映画化作品。1990年代のイギリスの若者文化を強烈に描いたこの作品は、エディンバラという街の別の表情を思い出させる。

また、エディンバラは『ハリー・ポッター』シリーズの誕生と関わる街としても知られている。作者J.K.ローリングがこの街のカフェで執筆したという話は有名だ。古い建物、坂道、墓地、学校、そして少し霧がかったような街の気配。そうしたものが、物語の想像力とどこかで結びついているようにも感じられる。

旅先で出会う街の魅力は、名所だけで決まるわけではない。そこに重なる物語や、人々の記憶、作品の気配が、その街をもう一段深く見せてくれる。

秋のエディンバラを歩いて

エディンバラは、僕にとってとても印象のよい街だ。

長距離列車で北へ向かう時間。車窓に見えた北の海。ウェイヴァリー駅を出た瞬間に広がった紅葉の旧市街。美術館へ向かう坂道。石造りの街並み。親切な人々との出会い。

それらは一つひとつは小さな記憶かもしれない。けれど、時間が経つほどに、ひとつの旅の光景として残っていく。

エディンバラは、華やかさと重厚さ、静けさと物語性をあわせ持つ街だ。いつかまた、長距離列車に乗って、北の古都へ向かいたいと思う。

秋の光の中で見たエディンバラの街並みは、今も静かに記憶の中に残っている。

筆者について

長谷川浩一|美術史家・講師・執筆

旅先で出会った街角の光、夜の気配、建築や風景に残る時間の層を、
写真と言葉で記録しています。
東京では西洋美術史講座 Edogawa Art Salon, Tokyo を開き、
noteでも美術や旅にまつる文章を書いています。

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